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【タイムライン】

薬物遠ざける3本の矢 混入問題受け、日本カヌー連盟再発防止策

薬剤師による「相談窓口」に座る馬場昭江さん。ドーピングに関する質問に答える=香川県坂出市で

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 カヌー・スプリントの国内トップ選手がライバルの飲料に禁止薬物を混入させた問題を受け、日本カヌー連盟は3月下旬のスプリント海外派遣選手最終選考会(香川県坂出市)から、さまざまな再発防止策を実施している。ドーピング防止規則に精通した薬剤師による「相談窓口」を設置したのもその一つ。窓口に立つのは、カヌー・スラロームの強化委員長で薬剤師の馬場昭江さん(55)。「競技者の視点に立って、一歩踏み込んだアドバイスをしていきたい」と話す。 (森合正範)

(1)うっかり服用歯止め 主催大会で薬剤師の相談窓口

 北京五輪から3大会連続でカヌー・スラロームの日本代表コーチを務め、しかも本業は薬剤師。アンチ・ドーピングに関して、これほどの適任者はいない。3月のスプリント海外派遣選手最終選考会。馬場さんの相談窓口には大会初日から高校生、大学生ら日本代表候補20人以上が訪れた。「相談に来るのは一人か二人だと思っていた。選手の関心がすごく高い」と実感した。

 質問の多くが、花粉症や風邪の薬、サプリメントなどについて「これは大丈夫ですか?」というもの。大会前日の監督会議では、禁止薬物の成分が含まれていると知らずに服用する「うっかりドーピング」を防ぐための講義を行った。市販されている風邪薬、50種類以上の写真を示し、「選手が飲んでいいのは、この中で二つだけ」と伝えると、驚きの声が上がったという。「体にやさしい薬でもドーピングとしては駄目。風邪薬で(禁止薬物が)入っていないのを探す方が大変」と説明する。

 心掛けているのは選手との触れ合い。「これまでもスラロームの現場では選手から相談されることが多かった。選手の会話を聞いていて『それ、間違っているよ』と言うこともある。でも、スプリントでは機会がなかった。まずは顔を覚えてもらい、気軽に話してもらえる環境をつくることが大切」と強調する。

 ライバルに禁止薬物を混入する前代未聞の問題が発覚した時には「ショックだった。考えたことがなかったので悲しかった」。同時に「できることはないか」と考え、自ら相談窓口設置を提案。今後、日本連盟主催の大会では窓口が設けられることになった。

 薬物混入問題がカヌー界に与えたダメージは計り知れない。しかし、馬場さんはドーピングに対する関心度が高まり、選手教育をする好機とも捉えている。「雨降って地固まる、となればいい。ドーピング対策に関してはカヌーの選手が一番だよ、としていきたい」。競技も知り尽くす身近な相談役として、会話を重ねていく。

飲み物に禁止薬物を混入された小松正治(右)を激励する松田丈志さん=香川県坂出市で

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(2)心のケア 選手支えるためにカウンセラー配置

 今回の問題の背景には加害者が五輪出場を巡る争いで焦りを感じていたこともあり、日本連盟はカウンセラーによる選手のメンタルケアを開始した。馬場さんは「再発防止のためには教育が大切」と述べる。

 若い選手の中には競技に集中して周囲が見えなくなる選手がいるという。「五輪で勝つのは誰よりも練習する選手ではなく、周囲の人たちを大切にする選手だと思う。サポート側も人間なので『この子のために』と思えば、率先していろいろとやってくれる。周囲に感謝し、周囲から愛される選手に。それを伝えていきたい」と意欲的に語った。

(3)ドリンク保管所 安心な管理

 日本連盟が主催する3月下旬以降の大会で「ドリンク保管所」が設置されることになった。被害にあった小松正治(愛媛県協会)は最終選考会で保管所を利用し「ボトル管理の心配がなくなるので、ありがたい。安心して試合に臨める」と語った。

 日本連盟の古谷利彦専務理事は「再発防止のためには、さまざまな方策を複合的に実施していくことが不可欠」と話す。同大会では競泳の五輪メダリストで日本アンチ・ドーピング機構(JADA)アスリート委員の松田丈志さんが講演。選手ら連盟会員には再発防止のための啓発冊子「Integrity of Sport(スポーツの高潔性)」が配布された。

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