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【タイムライン】

東京五輪まで2年 平昌の教訓

平昌五輪の開会式で入場行進するフリースタイルスキー・モーグル男子の堀島行真=今年2月、平昌で(潟沼義樹撮影)

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 勝つことを期待され、しかし、勝つことの難しさをアスリートたちは身をもって知っている。2020年夏に開催される東京五輪・パラリンピックまで2年を切った。今年2月の平昌冬季五輪で悔しさを味わったフリースタイルスキー・モーグル男子の堀島行真(中京大)とノルディックスキー複合の渡部暁斗(北野建設)が、「東京の夏」に贈る平昌の教訓を語った。 (上條憲也)

◆フリースタイル・モーグル 堀島行真

理想より適応力必要

 自分らしく戦う。多くのアスリートから聞かれる言葉だ。培った経験をもとに、自分が最も力を出せる挑み方だと信じるからだろう。モーグル男子の堀島も平昌に入るまでは、自分らしさにこだわっていた。だが、五輪はそれを許してくれなかった。

 「自分の滑りができない時にどう勝つか。そこが足りなかった。僕はエアを高く、ターンで速くという勝ち方しか知らなかった」

 2017年3月、世界選手権(スペイン)。高校1年から本格参戦するワールドカップ(W杯)で幾度も世界の壁に阻まれてきた分、「攻めないと勝てない」と怖いもの知らずの滑りを披露した。ぐんぐん加速し、勢いを殺さず高さのあるエアから再び爆発的なターンにつなげる滑りで、カナダの絶対王者ミカエル・キングズベリーをも破った。翌日の非五輪種目のデュアルモーグルと合わせて2冠。五輪を前に初めて世界の頂点に立った。

 得意なコースだったという今年1月のカナダでのW杯初勝利を合わせた計3勝を踏まえ、「ミック(キングズベリー)に勝つにはこの勝ち方というのが分かった」。それが五輪の挑み方になった。

 ただ、会場が変われば状況は変わる。平昌のコースは斜面のこぶの一つずつが大きく造られていた。視覚的に迫るこぶに「怖い感じがあった」。人工雪の雪面は固く、ターンで板もはじかれる。現地入り以来、攻略イメージを描けないまま迎えた決勝2回目。第1エアで体が流れ、バランスを崩して転倒。途中棄権の11位で幕を閉じた。

 「理想をぶつけても、状況によって力を発揮できないことがよく分かった。滑り方をまとめたり、いろいろな戦い方がある。五輪が終わったから言えること」

 痛感したのは、「勝負の舞台」に自分を合わせられるか。会場や対戦相手、どんな状況でも対応できる「引き出し」はあったか。応援する側に回る2年後の夏。東京五輪を目指す選手には国立スポーツ科学センター(東京・北区)などで出会った顔なじみもいる。夢に見た舞台で後悔してほしくないと願う堀島。「不安要素が一切ないような状態で五輪を迎えられれば、きっと楽しい五輪になると思う」

平昌五輪のノルディック複合個人ノーマルヒルで銀メダルを獲得した渡部暁斗=今年2月、平昌で(潟沼義樹撮影)

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◆ノルディック複合 渡部暁斗

楽しむ姿で競技身近に

 自身4度目の五輪で、渡部暁は前回大会の銀メダルを上回ることはできなかった。シーズンを通して前半飛躍(ジャンプ)で安定して飛距離を伸ばせるようになったとはいえ「僕はジャンパーじゃないので」。やはり、勝負を決める後半距離(クロスカントリー)でいかに圧倒的な走りができるかがポイントだった。

 後半距離に強いエリック・フレンツェルやファビアン・リースレら現役ドイツ勢だけでなく、歴代の強豪がこれまでどんなレース展開をしてきたかと比べても、「自分も、もっと違うレースができた場面があったんじゃないか」。そう振り返りながら、勝ち方を探る道はさらに続く。

 ただ、試行錯誤の続く道に悲壮感はない。日本のアスリートの多くには、血と汗がにじむような努力というサイドストーリーが存在し、渡部暁も「苦しいのは勝負の世界ではあり得ること」という。その上で、渡部暁らしい言葉がこう続く。

 「でも選手が楽しんでいる姿も見せていかないといけない。アスリートが苦しんでいたら、その競技の魅力が伝わらないから」。練習には競技と無関係に思われるようなメニューも取り入れ、楽しみながら体をつくる。競技中もしかり。楽しむことはスポーツの本質であり、人々の心を豊かにしていくものだからだ。

 毎シーズン、W杯で欧州を転戦しながら、観戦を楽しむ人々の熱気を会場で感じてきた。平昌では「レース中に日本語の声援はたくさん聞こえた」と感謝する。ただ冬季競技の多くは日本ではとかくマイナーの位置付け。五輪でなければなかなか注目度も高まらない。

 東京に五輪を迎えるに際し、期待したいことがある。「オリンピックが盛り上がるのは目に見えているけど、オリンピックだけにならないでほしい。終わった途端に閑散とするのではなく、ちょっとでもやってみようという人が増えてくれたら」

 史上最多33競技、339種目が実施される20年東京五輪は、見る人、する人が、さまざまなスポーツに出合う機会でもある。「有名種目とか無名種目とかではなく、何でもいいからスポーツが身近にあるのは良いこと。そういうオリンピックにしたらいいんじゃないかな」

 

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