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【ふくしま便り】

「ふるさと創生」成功例 葛尾村、IT整備で迅速避難

プレハブでもIT環境は整っている葛尾村役場仮庁舎=福島県三春町で

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 最初に、読者と竹下登元首相に謝りたい。かつて、市町村に一律一億円を交付した「ふるさと創生事業」を、ばらまきと批判した。

 福島第一原発事故から村民全員が無事、避難できた村を訪ねて、創生事業の成功例を知った。その村は葛尾(かつらお)村という。人口約千五百人の小さな村だ。福島第一原発の北西にあり、一部は原発の二十キロ圏内に入る。

 一昨年三月の震災直後、村役場は原発に注目。国などからの指示はなかったが、十四日午後九時十五分、松本允秀(まさひで)村長が全村避難を決め、一時間後に役場前に集合とした。

 電話は不通だったが、村内に残っていた住民ら六百十二人が時間通りに集まり、十一時五十分には福島市に避難を終えた。2号機から放出された大量の放射性物質が村を通過したのは十五日午後。間一髪で逃れたのだ。

 迅速な避難を可能にしたのは、役場の情報を全世帯に一斉通報できるIP告知放送があったからだという。そのきっかけがふるさと創生事業だ。村は一億円の一部で一九九一年、中学校にパソコンを導入した。その後、文部省などの「100校プロジェクト」に選ばれ、IT教育が広がった。四年前には約四億円をかけて高速通信網を整備した。

 金谷喜一(きんたによしかつ)副村長の話を聞くと、禍(わざわい)を転じて福となした村の姿が見えてくる。

 八九年、村は大水害に遭い、復旧工事の事務量が膨大になった。職員は約三十人なので、事務量が多くても、人は増やせない。担当だった金谷さんは表計算ソフトを使って書類を作った。それがきっかけでパソコン利用が職員の間に広がった。「それがふるさと創生事業と時期が重なった。中学校の先生が熱心だったのもよかった」と話す。

 総務課副主査で、IT化推進委員の松本好弘さんは100校プロジェクトのとき、中学生だった。避難後、役場は移転を繰り返しているが、「事務所が分かれても、ネットワークでつながっていれば、仕事にそれほど影響はない。パソコンのネットワークへの接続など、できることは自分たちでやっている」と言う。避難を受け入れた自治体では、葛尾村職員の仕事ぶりに感心しているという。

 今、復興予算の使途が問題になっているが、地方に任せた方がいいこともある。

 (福島駐在編集委員)

 

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