東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 東日本大震災 > ふくしま便り > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【ふくしま便り】

福島・石川町にウラン鉱石 戦時中、原爆開発で採掘

ニ号研究の実態を調べた橋本悦雄さん

写真

 福島県南部、阿武隈高地にある石川町。多くの珍しい鉱物を産出する場所として有名だ。戦時中、原爆開発のためにウラン鉱石を採掘した場所でもある。

 町立歴史民俗資料館で開かれている企画展「ペグマタイトの記憶−石川の希元素鉱物と『ニ号研究』のかかわり」(十一月三十日まで、入場無料)を見た。ニ号研究とは、陸軍の原爆開発計画の暗号名だ。

 同館の佐原崇彦さんはあいさつもそこそこに「石川町で原爆を作っていたわけではありません。ウランが出るといっても、町内の放射線量が高いわけでもありません」と言う。

 驚いていると「そういう新聞記事やテレビ報道が絶えないんです。空間放射線量が高いというのは風評被害です」と訴える。

 入り口近くのガラスケースの中に標本が並んでいる。ウラン鉱物として有望視されたサマルスカイト(サマルスキー石)は、乳白色の石の中に含まれる黒っぽい鉱物だった。

 三階には、石川町でのニ号研究を率いた、理化学研究所の飯盛里安博士に関する資料が並んでいた。採掘場の写真もある。地元の石川中学(現在の学法石川高)の三年生約百八十人がわらじ履きで働いたという。

 町文化財保護審議会委員の橋本悦雄さんは「今年五月に飯盛博士の次男の方が町に来られたのが縁で、多くの資料を寄贈していただきました」と話す。橋本さんらは新資料を加えて、石川町のニ号研究に関する本の年内出版を目指している。

 石川町では一九四五年四月、陸軍が民間工場をニ号研究用に徴収し、東京から機械を運び込んだ。中学生の動員も四月から。石川町産では足りないと、マレー産の鉱石も輸送した。しかし、六月下旬には研究中止が決まった。

飯盛里安博士から寄贈された資料が並ぶ企画展=いずれも福島県石川町の石川町立歴史民俗資料館で

写真

 「石川町産の鉱石は、有用鉱物をより分ける選鉱までいったかどうか。(ウランの含有率を高めた)イエローケーキを作る時間はなかっただろう」と橋本さんはみている。

 研究中止が決まっても、中学生は八月十五日まで鉱石掘りを続けさせられた。理由は不明。国家機密の闇の中だ。

 帰りに町役場に寄った。駐車場にあった放射線のモニタリングポストを見ると「0・064」。表示はマイクログレイだが、ここではマイクロシーベルトと同じ。確かに首都圏などと同レベルだ。

 (福島駐在編集委員)

 

この記事を印刷する

PR情報