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【ふくしま便り】

郡山産野菜 ブランドに カリスマ農家とレストラン

自分の農場で収穫した野菜を前に笑顔で話す鈴木光一さん=福島県郡山市の福ケッチァーノで

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 福島県郡山市役所近くにあるレストラン「福ケッチァーノ」でおいしい野菜を食べた。周りに雪が残っているのに地元で採れたものばかりだという。栽培したのはカリスマ農家と呼ばれる鈴木光一さん。食の魅力で風評を吹き飛ばし、多くの人に郡山に来てもらいたいという。

 福ケッチァーノはイタリア料理のシェフとして有名な奥田政行さんが、地元の生産者とともに魅力ある農産物を県内外に発信しようと昨年三月、オープンした。店はトレーラーハウスを二台並べて造った。郡山市にはイタリアンレストランが多いからとフランス料理にした。

 ランチはスープにポロネギ、メーンには真ゾイのポワレの付け合わせに御前人参(にんじん)、もものすけ(カブ)、キタアカリ(ジャガイモ)、冬甘菜(かんな)(キャベツ)、オータムポエム(アスパラ菜)が使われていた。保存したものを含めると、鈴木さんの農場では冬でも二十種類ぐらいの野菜が出荷できるという。

 鈴木さんは市内の農家とともに、「あおむしクラブ」をつくり、二〇〇三年から「郡山ブランド野菜」作りに取り組んでいる。会の名前のあおむしは、青虫が食べられるほど、安全で安心な野菜作りを目指すことから付けられた。

 ブランド野菜は公募で名前を付けている。第一号はグリーンスウィート(枝豆)。生ビールがおいしくなる初夏から収穫できるのが特徴だ。以来、一年に一つずつブランド野菜を増やし、今では十一品目に。緑の王子(ホウレンソウ)、佐助ナス(ナス)、万吉どん(タマネギ)など名前も楽しい。

 もっとも人気があるのは御前人参。普通のニンジンよりも細長く、色が鮮やかだ。郡山市には源義経を追ってきた静御前が、この地で池に身を投げたという伝説があるのにちなんだ。

 昨年十二月、日本野菜ソムリエ協会主催の野菜ソムリエサミットへ出品したところ、めんげ芋(サツマイモ)、冬甘菜が星二つ。紅御前(ニンジン)、御前人参が星一つで入賞した。

 福ケッチァーノの料理長、中田智之さんは「野菜がおいしい。例えば、もものすけを使ったスープ。カブとハマグリの出し汁だけでは、少し物足りない。上に乗せた魚の塩気によってカブがより引き立つ。そんな料理です」。野菜が主役で、魚や肉は引き立て役になっている。 (福島駐在編集委員)

料理で地元産の野菜を応援するレストラン「福ケッチァーノ」

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◆地元が自慢できるものを

 鈴木光一さんは郡山市の中心部から4キロ離れた大槻町で、祖父の代から大規模に農業をしている。生産だけでなく、農産物直売所と種苗店を営む。郡山ブランド野菜を始めた理由や今後について聞いた。

 ◇ 

 一番売れている品種がいい品種だと思っていたが、そうではなかった。たとえば、ニンジンの品種は数百ある。大産地の北海道では、毎年作るので、連作障害の出ない品種がいい品種なんです。売るのは東京だから、輸送で傷まない、日持ちがするのがいい。産地で売れているのが一番売れている品種になるが、理由は一番おいしいから、ではないんです。

 ニンジンの中には、採ってすぐに食べたら最高にうまい、という品種もある。みんなが買いたいと思うものを作るのが、あおむしクラブの方向性です。品種は私が選んで、みんなで決めています。

 原発事故で福島の農業はハンディがある。同じものだと他県産の方が高い。「あそこのニンジン、おいしいね」ではだめ。「あそこの御前人参はおいしいね」と言ってもらわないと。ただのニンジンではなく、御前人参を買ってもらう。御前人参は、普通のニンジンの2倍近い値段です。ブランドというのは、農家にとっては単価を上げることです。

 郡山には京野菜のような伝統のものはない。郡山の人がおいしいと言ってくれる、自慢してくれるものを作りたい。それで農家がもうかるようにしたい。目標は10アールで年間100万円の売り上げです。今、米は10アールで7、8万円ぐらいです。

 東京でも分かってくれる人がいるし、翌日には届けられる。次のステップとして東京に出て行くのもいいし、大事だと思っている。

 売って終わりではなく、料理になって食べてもらうところまで意識している。食文化から考えていかないと、日本の農業は変わらない。ぜいたくな話ですが、「福ケッチァーノ」の中田智之シェフが作ってくれるので、それができる。

 一人ではできないし、楽しくないと続かない。仲間が多いことが財産。郡山ブランド野菜を食べるツアーができ、郡山へ多くの人が来てもらえるようにしたい。

 

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