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【ふくしま便り】

新たな「遠野物語」序章 まちを創る 未来新聞

「物語を生み続ける商店街」について話す松田希実さん=岩手県遠野市で

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 岩手県遠野市は富士ゼロックスと共同で「遠野みらい創りカレッジ」を昨年、開校した。遠野物語で知られる同市は近年、人口減少が続く。

 廃校になった土淵中学校の校舎を利用したカレッジで今月十五日、「みんなの未来共創プログラム」の発表会があった。まちづくりへの提言を「未来新聞」という形で発表した。

 未来新聞は森内真也さんが開発した研修プログラム。アイデアが実現した姿を新聞記事にする。「新聞記事は社会人がもっともなじんでいる文章の形なので、誰でも書けるのが特長。実現した姿から発想するので、アイデアが広がりやすい」と森内さんは話す。

 このプログラムには岩手県内外の企業などが参加、七本の記事ができた。発表会では五年後の「未来新聞」の記事が披露された。たとえば、岩手県北バスの宮城和朋さんは「自給自足サバイバルツアー」、東洋SCトレーディングの花房明子さんは「貿易で町おこし」をテーマに発表した。

 同市の菓子店まつだ松林堂の松田希実さんは店のある一日市(ひといち)商店街の活性化をテーマに「物語を生み続ける商店街」を発表した。

 一日市はかつて月六回、市が立ち「馬三千、人三千」といわれるにぎわいだったというが、今はシャッター通りになっている。

 松田さんは、閉店した店舗の軒先を借りて開いた「まち市」のにぎわいを記事にした。

 「軒先に手作り感あふれる小さな店が並んでいる。手づくりパンやスイーツ…、ひときわ目立っていたのは子どもたちによるチャレンジショップだ」

 「遠野駅前から歩いて楽しめる観光コースにしたい。一番の売り物はフレンドリーな雰囲気。子どもたちにも手づくりの物を出し、ビジネスにチャレンジしてほしい」と記事の説明をした。

 新聞記事は昨年夏から参加者同士で意見交換しながら作られた。その中で、西洋の妖精「ゴブリン」の絵が使える見込みになったと話した。

 発表後、同市職員の伊藤由紀子さんが「ゴブリンの中に遠野らしく、カッパや座敷童(わらし)も少し入れたら」と提案した。「ちょうちんも加えたら」というアイデアも飛び出した。

 「人と人、ものと人、物語と人を結びつけようとする一日市商店街の歩みが『新遠野ひと・もの物語』として今後も続いていくことを期待する」と記事は締めくくられていた。発表会で、物語の一ページ目は開かれた。 (福島駐在編集委員)

郷土芸能「しし踊り」の衣装を見る東京の大学生と地元の高校生

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◆官・民・学でつながる輪

 「遠野みらい創りカレッジ」は企業だけでなく、大学、行政、地域などともネットワークをつくる。本年度は約二十のプログラムがある。いくつかを紹介する。

 今月十四日から法政大を中心に首都大学東京、中央大の大学生約二十人が、地元の遠野高校二年生十六人と一緒に「遠野で考えるわたしたちの未来」をテーマに将来構想を考えた。

 法政大の岡崎昌之教授は「二〇一一年八月から遠野市と連携して支援などをしている。今では遠野駅に着くと『帰ってきた』と言う学生がいる」と話す。

 学生らは最初に遠野市立博物館に向かった。山仕事の道具、ひな人形などが展示されている。目立つ物の一つに、郷土芸能のしし踊りの衣装があった。

 参加した高校生の一人、菊池真永(なえ)さんは南部田植え踊りの継承者で、遠野物語の語り部でもある。菊池さんは「地域によって踊り方や衣装が少しずつ違う。秋の遠野まつりでは、各地区の踊りが集まる」と大学生に説明した。

 同市出身で法政大二年生の太田代達哉さんは「離れてみて、故郷の良さが分かった。卒業したら帰ります」と話した。

 昨年夏には、東大生が海外の学生と一緒に訪れ、地元の遠野高校の生徒と四日間、民泊などして交流した。最初はもじもじしていた高校生が、英語で話すようになり、別れの時は、涙を流して見送ったという。

 岩手県沿岸の自治体と遠野市は〇七年、「三陸地域地震災害後方支援拠点施設整備推進協議会」を設立した。同市は北上山地にあり、沿岸部と内陸部の結節点になる交通の要所だ。

 翌年、一万八千人が参加し、航空機四十三機も出動する大がかりな防災訓練を実施した。こうした準備が役立ち、東日本大震災後、後方支援拠点としての同市の役割が評価されている。

 昨年秋、みらい創りカレッジで、大規模災害が起きた場合、後方支援拠点となりそうな全国の自治体が集まり、研究会が開かれた。同市ではカレッジの活動に市民を巻き込み、街の活性化に役立てようとしている。

 

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