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【ふくしま便り】

二本松・岳温泉の今 「歩く」催し 健康増進訴え

安達太良山の山頂直下を歩く参加者たち=福島県二本松市で

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 再生可能エネルギーの拠点として「エコツーリズム」で復興を図る福島市の土湯温泉の挑戦を先週、本欄で取り上げた。同じく温泉地でユニークな取り組みを始めているのが岳(だけ)温泉(福島県二本松市)。こちらは「歩く」をテーマに据え、体を動かして温泉で癒やされる「ヘルスツーリズム」に活路を見いだそうとしている。さて、どんな取り組みか。

 岳温泉は、高村光太郎が詩集「智恵子抄」でたたえた安達太良(あだたら)山の中腹にある。標高六百メートルほどの高原に旅館やホテルが点在し、スキー場が隣接する保養型の温泉地だ。

 十八日、一軒のホテルで講演会が開催されていた。講師はドイツ人のハートヴィッヒ・ガウダー氏(62)。モスクワ五輪の競歩で金メダルを獲得するなど一流のスポーツマンであった同氏は、四十一歳で突然、細菌性の心臓疾患に倒れる。心臓移植で命を取り留め、後にニューヨーク・マラソンで完走を果たすなど健康を取り戻す。その過程で考案した運動法が「パワーウォーキング」。心拍数をコントロールしながら負荷をかけて歩き、体全体を鍛える歩行法だった。

 「健康は努力によって得られるのです」と話すガウダー氏の言葉に約四十人の老若男女が聞き入った。この日のために県外から来た夫婦の姿もあった。

 講演会を企画した岳温泉観光協会の鈴木安一会長によると、ガウダー氏が初めて岳温泉に来てパワーウォーキングを紹介したのは二〇〇五年春。これを契機に「歩いて健康になる温泉」をキャッチフレーズに掲げた。

 岳温泉がもっともにぎわったのは一九八三年からの十年ほどだった。東北新幹線が開通したが最寄りの二本松駅は通らない。これに反発し、日本国からの独立を宣言。「ニコニコ共和国」をぶち上げると、物珍しさに観光客が殺到した。鈴木会長も第三代大統領に就任したが、ブームは長く続かない。次に活路を求めたのが、ヘルスツーリズムだった。

 「そもそも温泉は健康づくりの場です。欧州の保養地のような落ち着いた滞在型の温泉地を特色としたいと考えました」

 その後、二〇一一年三月に東日本大震災と福島第一原発事故が起きる。岳温泉は被災者の避難宿舎となり、県外からの客は激減した。

 小中学校が主導する教育旅行も途絶えた。原発事故から六年のこの冬、埼玉県の中学が事故後初のスキースクールを実施すると、「やっと解禁」と地元紙に大きな見出しで報じられた。

 そんな逆風の中で粛々と続けてきたのが、健康へのこだわりだった。柱の一つが総合型地域スポーツクラブ「岳クラブ」。

 毎月定期的に行っている「月例ウォーク」などのイベントに、県内外を問わず、誰でも参加できるクラブだ。

 六月のスケジュールを見ると、「滝ウォーク十一キロ」「山奉行コース十一キロ」などがある(ショートコースもあり)。いずれも参加費は三百円(年会費千五百円)。ほかにも「あだたら縦走トレッキング」「ノルディックウォーキング教室」「体力測定会」などのイベントがある。併設して「安達太良マウンテンガイドネットワーク」があり、友人同士の登山でガイドを頼むこともできる。

 福島県の宝はいくつもあるが、雄大な山々と温泉の魅力は格別だ。まずは訪れることから復興への手助けが始まる。

   ×  ×  ×

 問い合わせは、岳クラブ=電0243(24)2310、ハートヴィッヒ・ガウダーパワーウォーキング協会=電03(3791)8375=へ。 (福島特別支局長・坂本充孝)

 

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