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【ふくしま便り】

原発汚染土 公共工事で再利用 苦肉の策 安全性に問題は?

海岸部に大量に保管されている汚染土が入ったフレコンバッグ=福島県南相馬市で

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 東京電力福島第一原発の事故で出た汚染土を建設資材として再利用するための実証事業が、昨年十二月から福島県南相馬市の津波被災地で行われている。事故から六年たった今も、被災地にあふれ返る汚染土袋。これを減らすために環境省がひねり出した苦肉の策に思える。安全性に問題はないのか。現場を見せてもらった。

 実証事業の現場は南相馬市小高区の海岸部に設置された東部仮置き場の中にある。黒いフレコンバッグ約千袋が積み上げられた構内の一角にプレハブ建てのプレゼンルームがあり、環境省水・大気環境局の山田浩司参事官補佐が出迎えてくれた。ヘルメット、マスク、手袋を装着した上で実際の作業の現場に向かった。

 最初の工程は一個一トンほどもあるフレコンバッグの開封。袋を重機で突き破り、砂利や草の根などの異物を回転ふるい機で取り除く。さらさらになった土を放射性物質濃度で分別する。

 昨年三月、環境省は一キログラム当たり八〇〇〇ベクレル以下の汚染土について「遮蔽(しゃへい)および飛散、流出の防止」を行ったうえで、全国の公共工事で使用する方針を決めた。このうち今回の実証で使用するのは同三〇〇〇ベクレル以下の汚染土だ。ベルトコンベヤーに土を載せると、途中に設置された測定機が放射性物質濃度を測る。同三〇〇〇ベクレルを超えた土と、それ以下の土を振り分ける。

 「実際に三〇〇〇ベクレルを超える土はほとんどありません」と山田補佐は話す。仮置き場の土の平均値は同二〇〇〇ベクレル程度。突出して濃度が高い土を取り除くため、平均濃度はさらに低くなるという。

 次に分別を経た土を使用して盛り土をつくる。現在は遮水シートの上に縦二十メートル、横十一メートル、高さ六十センチの盛り土ができている。この上に三十センチずつの層を重ねていき、最終的には汚染されていない土を五十センチかぶせる。理論的には放射線の99%を遮断できるというが、これを確かめるのが実証事業の目的だ。盛り土から染み出す雨水についても調べるという。

 持参した空間線量計で測ると、盛り土周辺の線量は毎時〇・一マイクロシーベルトほどだった。福島市や郡山市といった県内の都市部の線量とほぼ変わらないレベルだった。

 環境省は実証事業を今年八月ごろまで続け、問題がなければ全国の公共工事への提供を始める。使い道は道路、鉄道、防潮堤、防災林などだ。

 だが日本政府は、これまでも汚染がれきを全国で焼却するなどして批判を受けてきた。「放射能汚染物質を移動させず、希釈しない」は放射線防護の国際合意だからだ。汚染土の再利用は逆風にさらされるだろう。

 これに対し、環境省の担当者は「使用目的を限定し、管理を継続することで安全を確保できる」と話す。やむにやまれぬ事情があるからだ。

 県内に野積みされる汚染土は二千二百万立方メートルに及ぶ。大熊、双葉町に建設中の中間貯蔵施設に運び込むはずだが、用地のうち契約済みは二割程度。施設の建設にあたり、国は県民に「三十年後には汚染土を県外に持ち出す」と約束した。だが最終処分場建設のめどは立っていない。八方ふさがりで、解決法はほかに見当たらない。

 しかし、汚染土が全国の道路や鉄道の建設資材に使われたとき、県民は再び冷たい視線にさらされることになるのではないか。それが心配で仕方がない。 (福島特別支局長・坂本充孝)

 

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