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【ふくしま便り】

飯舘村までの片道旅費補助 足運び感じて「までいの心」

福島大、新潟大など試験栽培場では、除染効果のテストのために植えたヒマワリが咲き誇っている=福島県飯舘村で

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 東日本大震災と福島第一原発の事故から六年四カ月がたち、活気を取り戻しつつある福島県。一方で悲劇の風化が進み、世の中から忘れ去られてしまうことを危ぶむ人も少なくない。そんな意識を反映してか、飯舘村が大胆な政策を打ち出した。条件付きながら村を訪問してくれた旅人に自宅から村までの交通費片道分を全額支給するという。上限六万円でほぼ全国の人が利用可能。異例の大盤振る舞いとも映るが、そこまでして村で見てほしいものとは何だろう。

 まずは「ようこそ」補助金の説明から。

 村の「ふるさと納税制度」と「いいたてっ子未来基金」に寄付した人が村を訪問した時、役場に行って申請書を提出すれば、自宅からの交通費を受け取ることができる。

 東京都在住の人ならば、JR東京駅から福島駅までの新幹線乗車賃、福島駅から約二十五キロ東にある飯舘村役場までのタクシー代(約一万円)やレンタカー代という具合。福島駅から飯舘村まで路線バスもあるが、便数は少なく停留所も遠いので、タクシーやレンタカーが現実的なのだという。自家用車を使ったときなどは、金額は村が相当分を計算する。

 利用は一人につき年に一回。期間は今年七月一日〜来年三月三十一日となっている。

 ここまで読んで、「なるほど、ふるさと納税の謝礼品の変形か」と考えた人もいるかもしれない。だが実際は違う。

 飯舘村のふるさと納税制度は二年前に始まったが、謝礼品を贈ろうにも、原発事故以来、村で生産できる物がなかった。このため全国の特産品を取りそろえ、カタログで選んでもらう形式にした。カタログには、沖縄県産のあぐー豚や北海道産のトマトジュースまで並ぶ。これが大人気を博した。二年間で集まった金額は六億円を超え、県内自治体のトップクラス。

 寄付した人は、こうした謝礼品を受け取った上で、新たに創設された「ようこそ」補助金の恩恵も受けることになる。

 菅野(かんの)典雄村長は、制度の意味について「村の現況を見ていただき、『までいの心』(手間を惜しまず、相手を思いやる心)を感じていただきたい。新しいつながりができたらとも思う」と話した。

 では、実際に補助金を利用した時、どんな旅ができるのだろうか。

 村は原発事故以来、六年続いた避難指示が今春、大部分の地域で解除になった。居住者は四百三十七人(七月一日現在)。本来の人口五千九百九十五人の7・2%にすぎない。

 豪華な公民館が新築され、国道沿いに道の駅も建設中(八月完成予定)で、村の中心部は復興景気に沸いている。

 一方で、旅人が泊まる宿泊施設はない。昼食を食べる場所もうどん屋が一軒あるだけだ。村内を移動するバス、タクシーもなく、車だけが頼りとなる。

 観光スポットといえる場所はないが、目を凝らすと、再生への萌芽(ほうが)はある。

 福島大、新潟大など試験栽培場では今、ヒマワリの花が盛りを迎えている。地元農家と研究者たちが合同でつくる「ふくしま再生の会」の拠点には、最新技術を使ったビニールハウスが立ち並ぶ。また地元農家らが自らの手で立ち上げた再生可能エネルギー会社「飯舘電力」の太陽光パネル基地などもある。

 目的を持って出掛ければ、補助金を有効活用できるだろう。

 「ようこそ」補助金に関する問い合わせは、飯舘村役場総務課企画係=電0244(42)1613=へ。 (福島特別支局長・坂本充孝)

 

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