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【ふくしま便り】

農地汚染調査 復興相に申し入れ 基準の5倍…明確回答せず

吉野復興相(左)へ申し入れ書を手渡した福島県農民運動連合会の根本会長=福島市で

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 東京電力福島第一原発の事故から六年半。国や福島県が県産農作物の風評被害払拭(ふっしょく)に躍起になる一方、置き去りにされてきたのが、作物を生み出す農地の放射能汚染問題だ。県農民運動連合会(農民連、根本敬会長)などは「まず実態調査を」と政府に訴え続け、ようやく今月、吉野正芳復興相への直接申し入れにこぎ着けた。だが、ほぼのれんに腕押しで、明確な回答は何一つなかった。

 申し入れ行動は二十日、福島市の復興庁福島復興局であった。参加者は根本会長ら約二十人で、山本太郎、岩渕友両参院議員、石井秀樹・福島大特任准教授も同席した。農民連と復興相との面談は今回が初めて。

 農民連は二〇一四年から、県内の農地の土壌の放射性物質濃度を測定し、記録してきた。そこで分かったのは驚くべき実態だった。

 原発や病院など放射線を扱う施設にある放射線管理区域の設定基準は、一平方メートルあたり四万ベクレル。ところが農民連の今年の計測では、福島市のブドウ畑で基準の五倍を超える同二二万七六〇〇ベクレルもの値が出た。県内百四十カ所の農地のうち、このブドウ畑を含め計百三十八カ所で基準値を超えていた。

 こうした結果を基に、農民連が申し入れたのは、主に以下の三点だ。

 (1)田畑一枚ごとの土壌表面汚染マップを作製せよ。

 (2)農家の健康診断、被ばく調査を実施し、病気発症時の治療費を無料にせよ。

 (3)農地への賠償措置をとれ。

 それぞれの要求の理由などは以下の通り。

 まず(1)。これまで国が実施してきた農地汚染調査は、航空機によるモニタリングだけだが、これでは大まかな汚染分布しか分からず、農家が関心を持つ一つ一つの田畑ごとの汚染状況をきめ細かく把握することはできない。

 (2)については、除染作業員などは労働者に該当し、厚生労働省が定める除染電離放射能障害防止規則(除染電離則)に基づいて被ばく量管理を受ける。ところが自営農家の場合は規則の対象外で、自己責任による被ばく対策を強いられる。県内の農家の九割以上が自営である。 

 (3)では、土の入れ替えなどで農地を原発事故前の状態に戻すには多額の費用がかかる。しかし国や東京電力は、この費用の弁済はしていない。環境省が実施する表土のはぎとり、盛り土などでは、土壌に放射性物質が残ってしまい、根本的な解決にはならない。

 根本会長らはこんな話も吉野氏に伝えた。

 福島市では原発事故前、秋になると中学生がナシ園を訪れ、ナシ狩りをするのが恒例だった。ところが事故後、子供の被ばくへの懸念からナシ狩りは中止となった。七年目の今年も再開の見通しは立っていない。子供とのふれあいは、生きがいであった。農民は悲しんでいる。

 なぜナシ狩りは再開されないのか。まさに農地が汚染されていることを、誰もが知っているからではないのか−。

 こうした訴えに対して、吉野氏が発した言葉は、「除染はしたのか」「その機械は何なのか」など片言の質問だけ。具体的な方針やビジョンの提示は一切なかった。

 根本会長は「農地は子や孫に受け継がれていく。未来に禍根を残してはいけない。復興相との面談が実現したのは大きな前進。申し入れは今後も続ける」と話している。 (福島特別支局長・坂本充孝)

 

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