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【ふくしま便り】

被災者の心の防波堤に 「いのちの電話」6年目の取り組み

被災者からの電話を受ける「福島いのちの電話」の相談員。受話器の向こうから切ない声が響く=福島市で

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 「古里へ帰りたい」「生きる目的がなくなった」。被災者であれば、愚痴のような内容でも話してくれていい−。福島県の社会福祉法人「福島いのちの電話」は三月から、東日本大震災や東京電力福島第一原発事故で被災した県民の悩みを電話で聞く「ふくしま寄り添いフリーダイヤル」を、毎月十一日に実施している。

 法人は自殺防止のための電話相談を受け付けているが、被災者が電話しやすいようにと新たな窓口を設けた。震災や原発事故関連の自殺者数は被災三県の中で福島県が最も多い。いのちを守る最後の防波堤になろうと、相談員たちの奮闘が続く。

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 まずは簡単に「いのちの電話」について。始まりは一九五三年に英国人の牧師が設立した「サマリタンズ(良き隣人)」の活動と言われる。牧師は「自ら命を絶とうとする人は、その前に私に電話をください」と呼びかけた。たとえ電話でも、会話を持つことで心の危機を脱することができると考えた。

 活動は世界に広がり、日本では七一年に「東京いのちの電話」がスタート。今では全国に五十二のセンターがあり、ネットワークでつながる。電話相談員はボランティアが担う。

 「福島いのちの電話」は、九六年に全国四十三番目のセンターとして開局。場所は福島市内のとあるビルの四階にある。

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 それにしても、震災から六年以上が経過した中、新たに「ふくしま寄り添いフリーダイヤル」を開局した理由は何なのか。三瓶弘次事務局長は話す。

 「現在、避難者は県内に一万八千人、県外に三万五千人いる。なのに今年三月、避難指示区域外からの避難者らに対する住宅無償提供が打ち切られた。避難者の間では、世の中から忘れられるという危機感がまん延しています」

 「気が弱くなっている人が多いせいか、一般の『いのちの電話』にダイヤルして通話中だったりすると、がっかりしてあきらめてしまう人が多いと聞いたのです。だから震災月命日の十一日は、総力を挙げて被災者に向き合おうと決めました」

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 三月以後、十一日の相談日にかかってきた電話は計約五十本。利用者は男性が多い。被災者のうち女性は、自宅から離れた復興公営住宅でも案外楽しく明るく暮らす人が比較的多い。それに比べ男性は、部屋にこもったり酒に浸ったりなど、孤独を抱え込む傾向が強いという。

 双葉町から埼玉県加須市に集団で避難した六十代の男性。

 「最初の二年間ぐらいは、頑張って生きようって皆で協力しあったよ。でも限界だ。疲れてみんなの気持ちはばらばらになった。町内会もなくなった。もう帰還は無理だろうな」

 別の男性は「千昌夫の『北国の春』だって『別れてもう五年、あの古里へ帰ろうかな』って歌ってるじゃないか。おれたちは、もう六年だぞ」

 警察庁によると、被災三県(福島、岩手、宮城)の震災関連自殺者数は、二〇一六年までに百七十六人。このうち福島県は八十七人と半数を占める。

 そんな被災者からの電話に対し、相談員ができることは「あなたは独りではない」というメッセージを送り続けることだ。

 三瓶事務局長は呼びかける。「これから年の瀬を迎え、一段と古里が恋しい季節になる。寂しさが募ったら、ぜひ電話をしてください。きっと役に立てると思います」 (福島特別支局長・坂本充孝)

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 「ふくしま寄り添いフリーダイヤル」は=電0120(556)189。毎月十一日午前十時〜午後十時。

 

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