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【ふくしま便り】

託児サービス付きカフェ 人口増いわき、起業家続々

カフェ「ichi」の託児ルームで過ごす子どもたち=福島県いわき市で

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 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の傷痕が、今なお色濃く残る福島県。だが、若い世代には挑戦の舞台にもなっている。特に県東部の「浜通り」の中心地、いわき市では、被災者の受け入れによる人口増で活気が生まれ、若い起業家たちが雨後のたけのこのように現れている。託児サービス付きのサンドイッチカフェ「ichi」も、若い世代の柔らかな発想から生まれた。

 「ichi」は今年九月二十日、JR常磐線いわき駅前にオープンした。ボリュームたっぷりのサンドイッチ、自家製ピクルス、野菜のスープなどが売り物。

 しかし、特長は何といっても、店の奥に保育士がいる託児ルームを備えていることにある。お客さんはもちろん、従業員も、近所で働くお母さんも、生後三カ月から三歳までの乳幼児を一時間単位で預けられる。

 「子どもを同伴できるキッズカフェと違うのは、子どもは必ず託児ルームに入れて、大人は大人の時間を楽しむという点です」と、広報担当の馬上裕子(もうえひろこ)さん(37)が説明してくれた。

 子育てをしているとストレスがたまり、一人になりたいときもある。でも、託児所や親きょうだいに預けることに抵抗を感じる人もいる。そんな人に気軽に利用してもらえたらと考えた。馬上さんは「もう一つ、子どもの顔を見ながら働ける職場があったらいいなとも思った。二つのコンセプトが融合したのがichiです」と言う。

 馬上さん自身、普段は託児ルームに二歳の男児を預けながら仕事をしている。実にichiのスタッフ十五人のうち十二人までが子連れ出勤をしている。そのうちの一人は男性だ。

 オーナーの松本麻衣子さん(36)は先月出産したばかりで、今は産休中。つまり、このカフェは、二十〜三十代の現在進行形の子育て世代が、自分たちの手でつくり上げた新しい形の子育ての場、ともいえそうなのだ。

 松本さんの結婚相手は、本欄で取り上げた松本丈さん(35)。いわき駅前の崩れかかったアーケード街を復興飲食店街「夜明け市場」としてリニューアルし、一方で若い起業家たちが活動のアイデアを出し合う定期的なプレゼンイベント「浜魂(ハマコン)」を主催している人だ。

 浜魂で生まれたアイデアは、幾つも現実にビジネス化された。託児サービス付きカフェもその一つといっていい。

 託児ルームを見せてもらうと、子ども三人が保育士と元気に遊んでいた。昼寝室や授乳室などもある。廃業したクリニックの建物を利用したとあって、広くて、清潔だ。

 託児には「見守り」と「完全託児」の二種類があり、「見守り」の場合は、おむつの交換や授乳が必要なときに親を呼ぶ。その代わり、会員価格で一時間七百円と格安の料金で済む。

 店の一角に、板や布などにも印刷できるUVプリンターがあった。こうした機械などを使ったものづくりのワークショップも定期的に開催している。「女性が社会に出るための一歩を応援したい。ichiという名前には、そんな意味もあります」と馬上さんは話した。

 ichiの連絡先は電0246(38)3396。 (福島特別支局長・坂本充孝)

 

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