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【ふくしま便り】

汚染土壌 再生利用に「待った!」 汚染拡散 住民「寝耳に水」

汚染土再生利用実験が予定されている市道。未舗装で棚田と隣接し、横を小川が流れる=福島県二本松市で

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 安達太良(あだたら)山の麓に広がる福島県二本松市の静かな田園地帯に、波紋が広がっている。除染で出た汚染土を処分するため、環境省が進める「汚染土壌再生利用実証事業」の舞台に、市内の道が使われる計画が浮上したのだ。寝耳に水だった住民は、計画の白紙撤回を求めて署名運動を始めた。

 実証実験の舞台となる場所は、二本松市原(はら)セ地区にある。一帯は緩い斜面で、整然とした棚田が並ぶ。

 この棚田の横の幅三メートルほどの舗装されていない市道を、長さ二百メートルにわたって掘り返し、近くの仮置き場に積まれた汚染土五百袋を路床材として埋める。その後、汚染されていない土を厚さ五十センチ程度かぶせて、アスファルトで舗装するのが計画の大枠だ。

 環境省が、この計画を二本松市議会に示したのは昨年十二月五日のことだった。斎籐広二(ひろじ)議員(共産)は「全く寝耳に水の話だった」と憤りを隠さない。

 「道路の横には小川も流れている。埋めた汚染土が下流の集落に流れることはないのか。なにより、これほど重大な話をこそこそと進めるのは、どういうことなのか」

 そもそも汚染土壌の再生利用とは何なのか。これまで環境省では、除染で出た廃棄物などを県内の施設で焼却し、体積を減らしてきた。それでも、千六百万〜二千二百万立方メートル(東京ドーム十三〜十八個分)もの汚染土や灰、廃棄物が残ると見積もられている。県民には、建設中の中間貯蔵施設に運ぶと約束してきたが、建設は遅れ、しかも汚染土などを三十年後、県外で最終処分するという、現実味の乏しい約束をしている。

 このため、同省は汚染土を全国の道路や堤防、鉄道などの公共工事で使用する道を探り始めた。二〇一六年十二月、南相馬市の汚染土仮置き場の中に、汚染土で盛り土をつくり、環境への影響などを調べる実証実験を始めた。そして次の段階として計画するのが、仮置き場の外での実験だ。現段階で計画されているのは二カ所。

汚染土再生利用実験のためにつくった盛り土(中央)。一連の実証実験の出発点=福島県南相馬市で

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 まず飯舘村で、帰還困難区域の長泥(ながどろ)地区に、避難指示が解除された地域から汚染土を持ち込み、農地の造成などに使う。汚染度の低い場所から高い場所に運んで処分する初めての試みとなる。地元は苦渋の決断で受け入れた。

 そして、もう一つが二本松市のケース。二本松市は、原発事故後も避難指示の対象にならなかった地域。普通の生活空間で汚染土の再生利用が可能となれば、汚染土の県外持ち出しへの第一歩となりかねない。汚染物質を薄めて拡散させることになり、やがて日本列島全体に汚染が広がる恐れがある。国際世論の批判にもさらされる。

 二本松市では、地元行政区の根本敬区長(61)らを中心に、実験の白紙撤回を求める運動が始まった。住民説明会の開催も求めていくという。こうした動きに、環境省は「対応については検討中」と答えるのみ。福島県の外からも注視することが大切だ。 (福島特別支局長・坂本充孝)

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 「ふくしま便り」は、これが最後となります。来週からは新支局長の「リポート福島」を掲載します。

 

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