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【先生 ウチは揺れますか! 東大地震研・大木聖子の日誌】

いつくる?首都直下 「今晩」でもおかしくない

日本の震源地図を見る大木聖子助教。「首都直下地震は今夜起きたって不思議じゃない、といつも説明しているんです」

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 地震の研究をしていると、いろんな人から、いろいろなことを尋ねられます。そんな日常をのぞいてもらい、地震や防災に関心を持っていただければうれしく思います。きょうは、お昼休みになったとたん、地震防災の担当になったばかりの新聞記者の真下君が駆け込んできました。大好きなカツ丼を食べに行こうと思っていたのに…。 

     ◇

 「大木さん、教えてください! 去年の大震災で地震が起きやすくなったっていいますけど、首都直下地震は本当にくるんですか?」

 「そりゃ、いつかはね」

 「冷たいですねー。お昼の邪魔したからですか? でも説明しないとデスクに怒られるんです」

 「じゃあ真下君のいう首都直下ってどんな地震?」

 「そりゃ東京の直下で起きる地震…かな? あれ。ちょっと待ってください(プププと携帯電話をかける)。デスクですか、首都直下ってどんな地震…ええ…すいません」

 「何て言われたの?」

 「首都直下といえば東京湾北部地震に決まっとるやろ、と」

 「今日のデスクは関西の人なんだ?」

 「ええ、ちょっと苦手で」

 「東京湾北部に決まっとる…真下君もそう思う?」

 「もう、いじめないでください(少しうれしそう)」

 「同じ断層は繰り返し地震を起こすのが普通。でも東京湾北部地震は過去に起きた証拠がないの。本当に地震を起こす断層があるのかどうかも分からないのよ」 

 「じゃあどんな地震がくるんですか。関東大震災みたいな?」

 「首都圏の直下地震には大地震と巨大地震があるの。大地震は阪神大震災のようなマグニチュード(M)7級ね。巨大地震は関東大震災を起こした関東地震みたいなM8級よ。まずM7級地震だけど、どこで起こると思う?」

 「え? 東京の下じゃ?」

 「M7級の地震は、ここ百二十年の間に茨城県南部や千葉県や東京都などで五つ起こってるの。だから南関東全体なら三十年に一度ぐらいM7ぐらいの地震があってもおかしくないという考え方ね。首都直下というより南関東直下というほうが正しいわね」

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 「じゃあ、来年ぐらいに起こっても不思議じゃないってことですか?」

 「そうよ。今晩でもね」

 「え、今晩ですか。巨大地震も?」

 「関東地震タイプは二、三百年に一度ぐらいといわれてるの。それが本当なら巨大地震が一回発生する間に大地震が五、六回は起こる計算ね。大地震を生き残らないと巨大地震も生き残れないでしょ。だから、今の首都直下地震の被害想定はM7・3の東京湾北部地震が基になってるの」

 「国が新しく見直す首都直下地震の被害想定は、巨大地震も考えるそうですね」

 「東日本大震災の教訓から、頻度は度外視して起こりうる最大の地震を考えることになったのね。最悪を考えておくのが防災の基本だから」

 「僕も会社に戻る前に最悪の想定をしておこう…」

<用語の解説>

 【デスク】現場の記者に指示を出したり原稿を手直ししたりする役割の中堅記者。物分かりが悪いふりをして後輩を教育することもある。 

 【東京湾北部地震】荒川河口付近の東京湾を震源とするM7.3の地震。国の中央防災会議が首都直下地震の被害を見積もるために想定。最悪の場合、死者は約1万人にのぼるとされる。揺れの強い場所では震度7の可能性もある。

 【関東地震】神奈川県南部から房総半島にかけて起こるM8級の巨大地震。沈み込む海底のプレート(岩板)と陸のプレートの境界で発生する。1703年と1923年(関東大震災)の2回が知られる。発生周期は200年程度ではないかと考えられているが、はっきりしていない。

 

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