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【先生 ウチは揺れますか! 東大地震研・大木聖子の日誌】

地震にも音色がある 低い音は高層建築に影響

地震研1号館の地下には免震装置が取り付けられ、建物の揺れの増幅を抑える

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 はあ〜。きのう「明日は来なくてもいい」って言ったのに。真下君も熱心ね。

     ◇

 「大木さん、こんにちは」

 「マシタくん! なに背負ってるの。まさかギター?」

 「今日は地震の音色の話でしょ。小道具が要るかと」

 「……。じゃあドミソの和音を鳴らしてくれる? あ〜ハーモニカはいらないから」

 (ジャ〜ン)

 「地震の揺れも、こんなふうに高い音や低い音が混じり合っているのよ」

 「高い音と低い音?」

 「空気を伝わる振動が音でしょ。じゃあ地面を伝わる振動は何かしら?」

 「地震の揺れか! あの揺れは大地の音なんですね」

 「高い音といったのは、揺れの周期が短いガタガタとした揺れ。低い音は周期の長いゆ〜らゆ〜らとした揺れのこと。人間には感じにくいけど高層ビルへの影響が心配されているのよ」

 「長周期地震動ですね。こないだ部長が飲み会で『うちタワーマンションなんだよ。どうしよう、どうしよう真下あああ〜』と泣いていましたけど、なぜ低い音が高層建物に影響するんでしたっけ…」

 「コントラバスやチューバみたいに低音の楽器はサイズが大きいでしょ。大きいほうが低い音が響きやすいのよ」

 「強引にドミソでいうと、高層建物は低いドの影響を受けやすいってことですね」

 「そう。影響を受けやすい周期で揺さぶられると、建物の揺れ幅はどんどん大きくなるの。それに、地震がやんでもすぐに収まらないのよ」

 「去年の大震災でも新宿の超高層ビルが微妙に揺れていましたよね」

 「大きい断層は低い音を出しやすい。これもコントラバスと同じね。だから巨大地震では長周期地震動が出やすいの。でも実を言うと、東北地方太平洋沖地震では低い音はそれほど強くなかったの。南海トラフの巨大地震では、ドの音がもっと強くなると考えられているのよ。去年の地震を基準にしちゃだめね」

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 「部長に話したら、また、真下あああ、ですね」

 「あのね。建物が折れたり倒れたりするって心配されているわけじゃないのよ。揺れ幅が大きくなると家具が倒れたり床を滑ったりして危険でしょ。オフィスならコピー機が走り回るとか。家具を固定してちゃんと備えればいいのよ。エレベーターが止まるから食料や水の備蓄も大切ね」

 「なるほど! それなら大丈夫だ。ところで首都直下地震はドミソでいうと何が強いんでしょう」

 「阪神大震災と同程度のマグニチュード(M)7級とすれば、ドよりもミやソが強くて、むしろ中・低層の建物が問題になる地震ね。阪神大震災では周期一秒ぐらいの“高い音”が強くて木造家屋がたくさん倒れたわ。古い住宅は耐震診断や補強が不可欠ね」

 「(ピロピロと携帯が鳴る)あ、部長からだ。真下です。はいはい。え。えええ〜。首都直下に備えて一戸建てに引っ越した?」

<用語の解説>

 【部長】部の責任者。デスクよりエラい。

 【長周期地震動】周期が2〜3秒以上の地震の揺れ。人は感じにくいが、高層ビルや石油タンクなど大型構造物を大きく揺らす。地盤を伝わっても衰えにくいため遠くまで届く。2004年の新潟県中越地震の場合、東京都内は震度3だったが超高層建物が長時間揺れた。気分が悪くなって倒れる人も出たほか、エレベーターのワイヤが切れたビルも。M8級以上の海溝型地震では強い長周期地震動が出る可能性があるとされる。

 【地震の音】地震の音が本当に耳で聞こえる場合もあるようだ。深い鉱山で起こる微小地震では「カン」と断層が割れる音が聞こえる場合があるという。東北地方太平洋沖地震の余震では、トラックのエンジンを始動するような音を聞いた人もいる。

 

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