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【先生 ウチは揺れますか! 東大地震研・大木聖子の日誌】

地震予知まだ先だよ 観測データもっと必要

地震発生の仕組みを説明する装置。動くベルトの上におもりを載せている

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 きょうは、研究所を見学に来た小学校の科学クラブのみんなを案内しました。遠慮のない質問にたじたじ。

 「わたし引率教員の引田です。みんなごあいさつは」

 「オレが班長。あとヨーコとメガネ。で先生、地震って予知できるの? 母ちゃんは無理だっていうけど」

 「いきなり核心ね。でも、その通り。いつ、どこで起こるなんて予知は無理。このへんで起きやすいかも、という大まかな予測はあるけど」

 「へ〜母ちゃん正しかったんだ。びっくり」

 「予知は難しいのよ」

 「東大の先生でも? 雨が降りそうとか、父ちゃんが怒りそうだとか分かるのに」

 「お父さんの場合は、ほとんどあなたが原因でしょ? 地震はいろんな要素が絡んで簡単に予想できないの」

 「いわゆる、予測困難な複雑系ってやつでしょうか」

 「さすがメガネ!」

 「ものが壊れる現象は複雑よ。割り箸ですら、いつどんなふうに割れるか正確な予想はできないの。でも、難しさの根本は、私たちが地震をほとんど知らないってこと」

 「????(四人分)」

 「地震は万年〜億年の単位で進む地球の活動の一部。でも地震観測の歴史は、まだ百年ほど。地震を理解するにはデータが足りないのよ」

 「では、どのぐらい観察を続ければいいと?」

 「五万年ぐらいかしら」

 「それでは火星に人が立つほうが先ですね。(メガネに指先を当て)気の長い話だ」

 「オレなら割り箸を一万本ぐらい折って調べちゃう!」

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 「いいポイントね。地震は規模が大きくて直接に実験できないの。だから観測でデータをためるしかないのよ」

 「ひゃっほ〜大当たり〜」

 「なんだか男子ばっかり楽しそう。イケメン先生っていないんですか?」

 「え? あの、それは…いるわよ。もちろん」

 「先生、赤くなってない? カワイイ〜。かわいいといえば、ウチのモモが地震の前にソワソワするの。動物って予知できるんじゃない?」

 「モモンガ?」

 「トイプードルよ」

 「(犬ならポチでしょ?)人より先に地震の音が聞こえてる可能性もあるけど、だとしても、予知というより地震発生を早く知るってことね」

 「緊急地震速報みたいに? それしかないの?」

 「そうね。それに“地震起きそうかも”なんていいかげんに警報を出したら大変よ。人相が悪いから逮捕しちゃえ、なんてひどいでしょ。逮捕には確かな証拠が必要よ」

 「今は現行犯だけか!」

 「わたし新聞で地震予知連絡会っていうの見たわ。予知は無理なのに。何の会?」

 「例えば、GPS(衛星利用測位システム)を使えば意外な予知の手掛かりが得られるかも…なんて話し合ってるのよ。大人だからって夢がないわけじゃないのよ。あら、もう時間ね。引田先生は何か質問おありですか?」

 「ご、ご一緒に写真を撮らせていただいても?」

 「(メガネに指先を当てて)実にかわいい夢ですね」

<用語の解説>

 【緊急地震速報】地震が起きると、まず小さな初期微動(P波)が届き、続いて強い主要動(S波)が来る。P波のほうが地盤を速く伝わるからだ。地震発生の直後、震源に近い地震計でP波をとらえて震源位置や規模、S波の強さなどを瞬時に計算。各地に警報を出すシステム。

 【動物の地震予知】よく地震の前にナマズが騒ぐといわれる。磁場などの異常を感じ取っている動物もあるとされるが、動物から情報を取り出すことは難しく、科学的に広く認められている例はまだない。

 【地震の繰り返し】ある断層が地震を起こしてから、次の地震を起こすまでの時間は、プレート境界の断層で百〜数百年、内陸の活断層では数百〜数千年に及ぶのが普通だ。中には数万年の間をおいて地震を起こす場合もある。

 

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