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【先生 ウチは揺れますか! 東大地震研・大木聖子の日誌】

あと3秒何をする? 緊急速報!周囲に知らせ、身を守れ

研究所を離れても、地震からは離れられません

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 きょうは日曜日。髪を切りに近所の美容室へ。学会も終わったし、最近は真下くんも来ないし、ゆっくりしようって思ったけど、無理みたい。

     ◇

 「おばさん、こんにちは」

 「あら、トコちゃん。ずいぶん伸びたね」

 「学会発表とか、新聞記者とか、小学生とか…説明は省くけど、いろいろあって」

 「大変ねえ。今日はシャンプーする?」

 「はい。しっかりめで」

 (ジャブ、ジャブ)

 「こないださ、久しぶりに速報が鳴ったけど、でも、あれじゃ何もできないよね」

 「もしかして地震の話?」

 「だめ? じゃあこないだの町内会。トコちゃん酔っ払ってテコンドーで…」

 「…地震の話にしましょ」

 「千葉の地震だったかしらねえ。速報が鳴ったとたん揺れちゃってたじゃない」

 「近くの地震は時間の余裕がないから、速報が間に合わないことも多いんです。間に合っても二、三秒かなあ」

 「たった三秒で何をすりゃいいの」

 「時と場合によりますね。まず揺れるぞって周囲に知らせること。あと、危ないことはすぐやめる。はしごに上っていたら下りるとか」

 「それぐらい分かるよ」

 「じゃあ、台所でおみそ汁作りながらジャガイモの皮むいてたら?」

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 「包丁置いて、コンロにかけつけて、火を消す」

 「ブッブーッ。揺れで鍋がひっくり返るかも。駆けつけて足にやけどしたら避難に困るでしょ。とにかく鍋から離れないと」

 「火は消さないの?」

 「一般家庭のガス管にはセンサーがあって、通常は揺れたら元栓が閉じますよ。まずは身の安全の確保です」

 「机の下にもぐれっていうけど? それは?」

 「可能な限りもぐって。強い揺れがくると身動きとれないし、考える時間もない。三秒間でどこに逃げるか、家や仕事場や途中の道なんかで、普段から考えておくことが大切ね」

 「なるほど。そうだねー」

 「(少し離れた場所から)そりゃ大切だけどさ。あたしパーマ液つけたまんまだよ。髪の毛傷んじゃわないー?」

 「あーら、そうだった!」

 「おばさん、お店ではお客さんの安全も考えなきゃね。じゃあ、もし地震のときパーマ液つけて待っている人がいたらどうする? 地震で水が止まったら? 髪がボロボロになったら大変よ」

 「そうねぇ。どうしよう。すぐ洗えるように、どこかに水をためとくのは? 余ったら生活用にも使えるしさ」

 「そうそう。調子出てきたわ。いい感じ。そうやってどんどん想像してみるのが防災の第一歩だから。じゃあ、パーマ液より大切なことがあるんだけど何でしょう?」

 「うーん」

 「ほらー。おうちが倒れたら元も子もないんだから。ちゃんと調べとかなきゃダメですよ。前にも言ったでしょ」

 「そうだよねえ。耐震診断しとかなきゃねえ」

「(少し離れた場所から)あのー。地震くる前に髪ゆすいでもらえる?」

<用語の解説>

 【トコちゃん】江戸っ子は悠長にサトコちゃんとは呼ばない。

 【避難行動】人により生活環境が違い、地震時に取るべき行動を一つの標語で言い切るのは難しい。目の前のコンロがすぐ消せるなら消してもよいだろう。何もない部屋にいて隣室の机にもぐろうとするよりは、その場で頭を守ってしゃがむほうが賢明だ。2年前、防災行動を再検討した文部科学省は標語の例に「緊急地震速報だ! 周りに声かけ、安全な場所へ!」を挙げた。「安全な場所」は各人が考え、家具固定や耐震補強などで自らつくり出すものだ。

 【パーマ液】パーマではふつう二つの薬液を使う。第1液で髪を柔らかくしてカールさせ、第2液で元に戻す。第1液を長時間つけっぱなしにすると、髪が柔らかくなりすぎて、ボロボロになったり切れたりすることもあるという。

 

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