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【先生 ウチは揺れますか! 東大地震研・大木聖子の日誌】

効果的な情報伝達を 備えの大切さに目を向けて

防災情報は伝え方を誤ると逆効果になることも。どう発信すべきか…いつも考えています

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 きょうは高校の同級生の結婚式。なぜ美容室に行ったかバレちゃいましたね。二次会で仲良しのマリコと話してたらユーコも加わって…。

     ◇

 「サトコ、サトコ、あれどお? 当分は大丈夫ぅ?」

 「ん? ごめんマリコ。なんのことだっけ?」

 「ほらぁ、地震の研究所にいるからぁ、地震起こる前に電話してくれるってぇ」

 「そんな約束してないよ! 地震なんていつ起こるか分かんないんだから」

 「ほんとぉ? 会社で『友達が東大で地震の研究してるんだけどマジ頭よくて、地震の前にマリコに電話くれるからぁ、みんな大丈夫だよ!』って言っちゃったけどぉ?」

 「それ無理だから」

 「もう言っちゃったもん」

 「絶対無理だから」

 「して」

 「無理!」

 「二人とも何モメてるの。花嫁のブーケは私のよ」

 「違うよ、マリコがこんなこと言うの(ぼそぼそ)」

 「え、無理なの? マリコから聞いて期待してたのに」

 「ユーコ、あんたクラス委員だったでしょ。予知なんてできないの。こないだ小学生にも説明したばかりよ!」

 「じゃあぁ〜、地震の研究所って何してるのぉ?」

 「いつ起きるか分からなくても、起きたらどうなるかは知っておかないと。だから地面がどう揺れるとか、建物にどう影響するかとか研究してるのよ」

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 「そうか! 予知できてもできなくても、どうせ揺れるんだもんね」

 「そうそう。どう揺れるかを計算する人もいるし、実物の家を巨大な実験室で揺らして壊して調べる人もいるの」

 「そうなんだ!」

 「もったいなぁ〜い」

 「地震工学。重要よ。ほかに、起きた地震の特徴を調べたり、地震とか地面の微妙な伸び縮みとか測ったりして、予知の手掛かりを探している人もいるよ。古文書で昔の地震や津波を調べる研究とか。温故知新ね。ダイナマイトで地面を揺すって地下の活断層を探す人たちも。通称、爆破グループ」

 「こわぁ〜い」

 「でサトコの研究は?」

 「地震研究の成果を知ってもらって、役立てるにはどうするかって考えてるの。地震や津波の災害情報をどう伝えれば効果的かって。まあ、予知は無理だと理解してもらうのが第一歩なんだけどね、なかなか難しいのよ」

 「ごめんねぇ〜」

 「ううん。ハッキリ伝えてこなかった地震学者の側にも責任があるんだから」

 「どうしてハッキリしたほうがいいの?」

 「予知が無理だって納得できれば、じゃあ被害を小さくするにはどうしようって方にもっと目が向くよね。備えこそ肝心。それで一人でも助かる人が増えたらと思って」

 「えぇ〜ん。わたしサトコに協力するぅ。一人で頑張ってるのね〜」

 「泣かないで〜。一人じゃないよ。力を貸してくれる人たちもいるし(とは言ったものの、どうもこれが)」

  ・・・・・・・・・

 「ヘ〜ヘックシッ!」

 「マシタぁ! おやじくさいクシャミしとらんと、はよ原稿出さんかい!」

<用語の解説>

 【助教】いまさらだが解説しよう。大学での身分上は教授、准教授、助教の順だが、職務は教授や准教授と同じで「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する(学校教育法)」。最もイキのよい研究教員層だ。

 【爆破グループ】爆破地震動研究グループの略。火薬を爆発させて人工地震波をつくり地下を調べる。地下で跳ね返ってくる地震波を調べ、埋もれた活断層を探す。最近は機械の振動を使う手法も増え制御震源地震学などという。

 【研究例の図】繰り返し聞くなどして特定の数値が印象に残ると、その後の判断に影響する傾向があり、アンカリング効果という。大震災報道では危険性の判断を甘くする方向への同効果があった。

 

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