東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 東日本大震災 > 先生 ウチは揺れますか! 東大地震研・大木聖子の日誌 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【先生 ウチは揺れますか! 東大地震研・大木聖子の日誌】

立地より耐震性大事 震度マップはあくまで仮定

研究所屋上で地形について説明する大木助教。「地盤の性質で揺れ方や揺れの大きさが変わります」

写真

 久しぶりに真下君が来ました。あいかわらず何か問題を抱えているようだけど、いつもと少し様子が違うみたい。

      ◇

 「はあ〜。どうしたらいいんでしょう大木さん」

 「さあ。分かんない」

 「今のアパート、耐震診断したら建て替えることになって。引っ越すんですけど、どこに住めばいいのか」

 「駅近がいいんじゃない」

 「それ不動産屋でも言われましたよ。そういう話じゃなく、揺れるとか揺れないとかあるじゃないですか」

 「今ごろになって連載のタイトルを気にしてるの?」

 「それはいいっこなしでしょ〜。ほら、例えば文部科学省が出した首都直下地震の震度マップ。東京湾岸の一部に赤く塗られた所ありましたよね。震度7が予想されるって場所。そこはやめたほうがいいのかなって。どうせ住むなら安全な場所がいいでしょ」

 「ちょっと、今ごろ何言ってんの。あのマップで震度7とか6強とか細かくこだわっても意味ないって常識でしょ? 真下くんとこの新聞も、一面で解説してたじゃない」

 「(プププと携帯で検索)あ。ほんとだ。誰が書いたんだろう…」

 「あのマップはね、東京湾北部地震が発生したと仮定した場合。前にも説明したけど、東京湾北部地震は過去に起きたかどうか分かってないの。だから情報が乏しくて、いろいろ仮定を重ねて計算してあるわけ。つまり、マップ通り揺れるかどうかなんて分からないってこと」

 「あの地図は、ほんの一例ってことですか!」

写真

 「やっと分かったか…。どうしても気になるのなら内閣府が作った『ゆれやすさ全国マップ』見てみたら?」

 「(プププ)これか。ふーん。東京都は、東側がわりと揺れやすく、西部の丘陵地は揺れにくいんですね」

 「東部は大昔に海だった場所が多いから、地盤が軟らかで揺れやすいのよ」

 「じゃあ、住むなら多摩丘陵か。青梅市なんかも揺れにくそうですね。でも少し遠いかなあ。朝早いの苦手だし…。大木さんもですよね」

 「(ムッ。そりゃ地震研に着いてからお化粧することもあるけど)でも、丘陵ならどこでも揺れにくいわけでもないのよ。谷間を埋め立てた造成地なんかは軟らかくて揺れやすい場合もあるし。細かく見ないと分からないわ」

 「大ざっぱに見ろとか細かく見ろとか…」

 「私なら地盤より建物をチェックするわ。一九八一年に改定された新耐震基準に沿っているか、または耐震診断を受けて補強されたか」

 「なるほど。基本は建物の安全性か。場所は、あまり遠いと急に呼び出されたときめんどうだしなあ」

 「会社の人たちはどうしてるの?」

 「そうだ。去年、家を買った先輩に聞いてみよう。(プププ)ほー。はー。へえー」

 「先輩はなんて?」

 「警視庁の『事件事故発生状況マップ』を見て家を選んだそうです。そりゃおめえ安全が第一だろって。安全って一体なんでしょうか…」

<用語の解説>

 【震度マップ】ある断層が地震を起こしたときの震度分布を予測した地図。一般に、断層が端から割れるか中心から割れるかで揺れの分布は変わる。アスペリティー(強い揺れを出す部分)が断層のどこにあるかにも左右される。東京湾北部地震の場合は、これらの情報が分かっていないため、過去の別の地震を参考に位置を仮定し計算している。実際にぴったり仮定通りに起きるとは考えにくい。

 【地盤と揺れやすさ】地表の揺れは地盤の性質に左右される。軟らかな地盤は揺れやすく、固い地盤は揺れにくい。山地では表面の軟らかな土砂が流されて揺れにくいことが多い。逆に平野の海沿いは、流されてきた土砂がたまって軟らかい地層をつくることが多く、揺れやすい。揺れに伴い、山地では地滑り、軟らかい地盤では液状化などが起こることもある。

 

この記事を印刷する

PR情報