東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 東日本大震災 > 長久保宏美のリポート福島 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【長久保宏美のリポート福島】

双葉郡7町村の生活実態調査 半数以上うつ症状に近い状態

 福島大学うつくしまふくしま未来支援センター(福島市)の調査グループは、東京電力福島第一原発周辺の福島県双葉郡七町村の約二万七千世帯を対象に、生活実態をアンケートした結果をまとめた。避難中の人も含めた住民の半数以上が「うつ症状に近い状態にある」と判断された。八割近くが震災時の場所に住んでおらず、長期化する避難生活や放射性物質への不安から、ストレスを抱えている実態がうかがえる。

写真

1万人を超える避難者の生活実態を明らかにした報告書=福島市で

写真

 調査対象は原発事故当時、双葉郡内の七町村(浪江、双葉、大熊、富岡、楢葉の五町と川内、葛尾の二村)に住んでいた約二万七千世帯。昨年二〜三月、県内外の避難先も含め調査票を郵送し、約一万世帯から回答を得た。回答者のうち県内避難者が75%、県外が24%、不明が1%。報告書は今年一月にまとめた。

 調査では、精神的健康状態を調べるため、国際的に広く用いられている「WHO5」と呼ばれる手法を使った。「ぐっすりと休め、気持ち良く目覚めた」など、過去二週間の自分の精神状態について、五つの質問に答えてもらい、その結果を数値化した。二十五点満点で、点数が高いほど「精神的健康状態が良い」と判断される。

 その結果、うつ症状に近い状態と判断される十三点未満の人が、全体の56・5%を占めた。二〇一一年九月に実施した前回調査の74・3%と比べれば改善傾向を示しているが、回答当時まで六年を経過しても、過半数の住民の精神状態は良くないままといえる。

写真

 また、住民の「現在の考え」について、「強くあてはまる」から「まったくあてはまらない」まで、五段階で回答。「原発の廃炉までに事故が起きないかどうか不安」の項目では、49・6%が「強くあてはまる」と回答。「中間貯蔵施設、廃棄物処理施設などの安全性について不安」についても46・5%が「強くあてはまる」と回答し、原発への強い不安を示している。

 職業は「無職」が半数超の55・5%。「正規の職員・従業員」は20・6%で、生活基盤の不安定さがうかがえる。77・1%が「震災時の場所に住んでいない」とし、自宅の状況は「修理しないと住めない状態」と「建て替えないと住めない状態」を合わせると55%に達した。44・8%は「購入・再建した持ち家」に住んでいた。元の住居地への帰還意思は「戻る気はない・戻れない」が58・8%。「近年中に戻りたい」は6・6%にとどまり、地元を離れざるを得ない厳しさを示した。

 結果を取りまとめた元福島大行政政策学類准教授で現在、立命館大産業社会学部の丹波史紀准教授(社会福祉論)は「前回調査から六年が経過し、住宅を再建・購入した人も増えてきているので、もっと精神的に落ち着いてきていると思っていた。生活設計に見通しが立たない人が、まだ多いのではないか」と話している。 (福島特別支局長)

 

この記事を印刷する

PR情報