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【長久保宏美のリポート福島】

双葉郡調査 丹波准教授に聞く 生産年齢人口3割無職に驚き

避難住民の実態調査をとりまとめた立命館大学の丹波史紀准教授=福島大学で

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 東京電力福島第一原発が立地する福島県双葉郡の住民を対象に昨年、大規模な生活実態調査をした立命館大産業社会学部の丹波史紀准教授(社会福祉論)に、調査報告書で判明したデータをどう受け止めるべきなのか、話を聞いた。

 −どのような経緯から調査を実施したのか。

 丹波 最初の調査は東日本大震災の半年後、二〇一一年九月。原発事故などの影響から、双葉郡の住民の広域避難が始まり、その時点での生活実態を調べることになった。調査当時、准教授を務めていた福島大学と双葉郡とが協力し、県内外に避難している人たちを対象に、全数調査を実施することになった。約一万三千世帯から回答を得た。

 昨年春、一部地域を除き四町村の避難指示が解除された。避難した人たちの実態に大きな変化があるのではないかということで昨年、二回目を実施し、今年一月にまとめた。

 −二回目の調査をして感じたことは?

 丹波 十五〜六十四歳までの生産年齢人口の三割が無職だったということに驚いた。避難した人たちは賠償金が支払われているからそれで生活できるだろう、という人がいる。しかし、かつて一括賠償金を受け取ったが、現在は何も受けていない人もいる。

 −なぜ、職に就けない人がいると考えられるか。

 丹波 避難で学校が替わり、卒業後も慣れ親しんだ地域で就職できないでいる人、避難した段階で年齢が高く、正社員として企業に受け入れてもらえない人もいるのではないか。

 −六年の変化を感じる項目は何か。

 丹波 避難先での住宅購入が進んでいることだ。住宅を購入・再建した人は、県内に避難した人で47・8%、県外で46・5%に上り、双葉、大熊、富岡、浪江各町の出身者が多い。

 また、印象的だったのは、四千三百二十人から回答が寄せられた自由記述だ。事故から時間が経過して自分たちの状況が(社会に)伝わっていないのではないか、もどかしいという声がたくさんある。生活再建が進んでいない、この不安な状況を誰かに受け止めてほしい、なんで、この状況が理解されないのか、という趣旨の記述が強く印象に残った。

 −調査結果から見えた、今後の懸案は?

 丹波 行政が避難住民の帰還を進めようとしても、生活インフラが不十分だから、住民は帰還できない。一方で地元の会社は、除染作業などの流動性のある労働者がいつまで滞在するか見通せないので、正社員を雇用する判断に結び付かない。安定した職場が確保されにくいのが現状だ。 (福島特別支局長)

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