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【長久保宏美のリポート福島】

甲状腺がん 心理的ケア重要 ベラルーシのリュドミラさん講演 

講演するリュドミラさん

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 チェルノブイリ原発事故で被ばくし、十五歳で甲状腺の摘出手術を受けたベラルーシの心理カウンセラー、リュドミラ・ウクラインカさん(42)が、福島県郡山市で講演した。手術と後遺症、心の傷に苦しんだ経験から、カウンセラーに。事故後三十二年間の体験や思いを振り返り、健康に不安がある人たちの心をケアする仕組みが必要と訴えた。

 一九八六年の事故当時は十歳。チェルノブイリ原発から二百五十キロ以上離れた、ベラルーシ南西部のブレスト州に住んでいた。旧ソ連時代で、軍の化学部隊に所属していた父は、事故対処要員として現場に駆り出された。「家を出て行ったときと同じ格好で帰宅した。何の装備もしていなかった」という。後に判明したことだが、地元の農産物も汚染されていた。

 事故から五年ほど後、甲状腺にしこりが見つかり、首都ミンスクの病院でホルモン剤を処方された。その後、日本からの支援機材でエコー検査を受け、細胞も採って調べた。九二年二月に甲状腺の摘出手術を受けた。当時、子どもに甲状腺がんが見つかるのは珍しかった。

 「何年生きられるの?」「子どもは産める?」。いろいろなことを考え、不安だった。手術痕は大きく、隠すこともできず、執刀した医師も一緒に泣いたという。その後結婚し、出産。健康な女の子で現在十三歳になった。

 事故当時の現地の医療水準では、甲状腺の全摘出手術が一般的だった。副作用があるうえ、傷を見ることでストレスを強く感じたことが、カウンセラーになろうという決意につながった。講演後の取材に「不安な気持ちを自由に言える場を確保することが必要」と強調した。

会場からの質問に答える木村准教授(中央)=福島県郡山市で

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 リュドミラさんと独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)、講演主催者のNPO法人「チェルノブイリ医療支援ネットワーク」で医療通訳を務める山田英雄さんが加わった鼎談(ていだん)があり、会場から質問を受け付けた。

 木村准教授は、事故から八年たった九四年ごろ、ベラルーシで小児甲状腺がんが増え始めたとするデータを紹介。「潜伏期間などを考慮すると、福島でも今後(放射線を原因とする)甲状腺がんが増える恐れがある」とした。

 「ベラルーシでは、甲状腺がんの原因が原発事故だと認める際、迷いはなかったのか」という質問に、木村准教授は「あった。(権威ある科学専門誌)『ネイチャー』が甲状腺がんが増えていると報じても、発症が早すぎるとして、国際原子力機関(IAEA)などは否定的だった。その後、多発が認められるまで十年を要した」と明かした。

 東京電力福島第一原発事故を受け、福島県は県立医科大に委託して甲状腺検査をしている。対象は事故当時十八歳未満だった約三十八万人。百九十七人が悪性ないし悪性の疑いと判定され、百六十一人が手術した。検査の在り方や事故との関係を検証する専門家による検討委員会の二〇一六年の中間取りまとめでは、先行検査(一巡目の検査)の結果を基に「放射線の影響とは考えにくい」とした。県県民健康調査課は「現在も先行検査の結果を覆す状況になっていない」としている。(福島特別支局長)

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