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【長久保宏美のリポート福島】

復興の在り方を考えるフォーラム  すべての避難者に保障を 

インタビューに答える今野順夫・福島大名誉教授

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 福島県民自らの力で、この難局を乗り越えられないか−。福島大学名誉教授の今野順夫さん(74)は、東日本大震災が発生した二〇一一年から、県内各分野の専門家や自治体関係者を講師に呼び、復興の在り方を考える「ふくしま復興支援フォーラム」を続けている。フォーラムを通じて見えてきた、福島の現状について聞いた。

 −どのような経緯でフォーラムを発足させたのか。

 今野 一一年十一月、私のほか、弁護士、放射線に詳しい医師、都市計画研究者、法律学者らが呼び掛け人となってスタートした。今月二十一日で第百三十回を迎える。福島でいったい、何が起きているのかを正しく認識しよう、そして、どうやって復興していけば良いのか。行政の立場ではなく、市民の立場で考えることにした。地元の建築士、医師らの力を借りる必要があると思った。

 −原発事故から七年三カ月が経過した。県によると、五月末現在で、東京都の約四千人を筆頭に約三万三千八百人が県外に避難している。県内には一万二千百人(四月末現在)。最大の課題は何か。

 今野 「避難者の地位をどう保障すべきか」ということだ。すべての避難者がより充実した一定の行政サービスを受けられるような仕組みが必要だ。

平日夜にもかかわらず、フォーラムには毎回、原発事故や復興に関心の高い人たちが参加する=福島市で

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 「原発避難者特例法」では、富岡町や大熊町など避難指示の出た十三市町村に住民登録していて避難した人は「避難住民」として、避難先で行政サービスを受けられる。介護保険制度の要介護認定や保育所入所、妊産婦らの健康診断などだ。

 だが、日本学術会議が昨年九月にまとめた提言でも指摘したように、指定市町村以外から避難した人は、特例法の直接の対象とならない。元の自治体と避難先の自治体が協力して、「二重の住民票」のような仕組みが求められる。

 −大熊町など放射線量が高い帰還困難区域内の一部区域を集中除染し、インフラを整備する、国の特定復興再生拠点事業が進んでいる。

 今野 国の復興予算には当然、区切りがある。各自治体は、予算が来るうちに復興計画を立てようとする。ただ、部分的に除染して避難指示を解除しても、帰らない人もいる。放射線に対する考え方はさまざまで、帰りたいけど帰れない人の権利をどう保障するかが問題だ。

 −自治労福島県本部が昨年末、原発事故で避難区域となった双葉郡八町村と南相馬市、飯舘村の職員計二千五百三十人を対象にしたアンケートでは、正職員のほぼ半数が震災後、家族と分かれて暮らしていた。「定年まで働くつもり」と答えたのは48・8%と半数を割っている。自治体の存続にかかわる。

 今野 現場の職員レベルでは、自治体間で共通する問題解決のため情報を共有しようとする意識がある人もいるが、首長レベルになると、自分たちのやり方を中心に考えるので、なかなか話が進まない。双葉郡を中心とした被災地域の自治体行政は、県がもっとイニシアチブをとって、自治体が合併せずとも、広域連合のような形を導入する局面が来るのではないか。 (敬称略)

    ◇   ◇

 <今野順夫(こんの・としお)> 1944年5月、宮城県女川町生まれ。東北大大学院法学研究科修士課程修了。元福島大学長で、行政社会学部教授。2010年から同大名誉教授。生活協同組合コープふくしま理事長。インターネットで「ふくしま復興支援フォーラム」と検索すると、過去の講演者や報告概要、一部報告書を閲覧できる。

 

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