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【長久保宏美のリポート福島】

山の恵み 続く放射能汚染 山菜直売所で基準値超

「山形産」として直売所で売られていた山菜のコシアブラ=福島県猪苗代町で

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 東京電力福島第一原発事故から七年が過ぎても、山の恵みの放射能汚染は色濃く残っている。東日本の広い範囲で、野生の山菜やキノコの出荷制限が続く。福島県内の直売所では、食品基準(一キロ当たり一〇〇ベクレル)を上回る山菜が売られていたケースもあった。目に見えぬ放射能のリスクは消えてはいない。

 山菜や、秋に旬を迎えるキノコの放射能汚染は、福島第一原発から二百キロ以上離れた場所でも確認され、基準値超えの報告が相次ぐ。二〇一六年に宇都宮市の学校給食に出されたタケノコが、一七年八月には栃木県那須塩原市で山形県産とされるキノコ(チチタケ)が基準値を超えた。

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 林野庁によると、山菜やキノコの出荷制限は青森県から静岡県まで東日本の十六県に及ぶ。山菜のコシアブラは福島県内のほとんどの自治体のほか、北関東、新潟、長野など九県で、市町村によっては出荷制限や自粛が続く。

 福島県内では野生の山菜やキノコを採り、観光地の道沿いなどで直売して生活の糧にしている例が多い。県林業振興課が把握しているだけで四百軒以上ある。

 本紙は五月の大型連休中、観光名所の猪苗代湖がある猪苗代町や周辺の山形県南部を巡り、国道沿いの直売所や「道の駅」など八軒で山菜を購入。放射性セシウムの濃度を、ゲルマニウム半導体検出器で測った。

 その結果、猪苗代町の二カ所の直売所のコシアブラから食品基準の十四倍と六倍のセシウムを検出。直売所では、出荷制限がない「山形産」と手書きの紙を掲げていた。

 本紙の通報で県は、直売所と近くの食堂を調査し、自主回収と廃棄を指示。山形県で採取されたことは確認できなかったという。この直売所を営む女性(77)は取材に「付き合いの長い福島県内の人が『山形で採ってきた』と言って、安全だという測定結果の紙も持って来たので仕入れたのに…」と戸惑っていた。

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 本紙調査では、町内の別の直売所や、山形県内の道の駅で買ったコシアブラは基準値以下だった。不検出を示す測定結果の書類を掲示した店や「危ないから売らない」という店もあった。県の担当者は「これまでも直売所の巡回指導をしてきたが、今後はさらに強化する」と説明した。

 山菜やキノコといった野生の食べ物は、規制の目を光らせるのが難しい。本紙調査は、福島県飯舘村の農業見習い伊藤延由さん(74)の話がきっかけ。昨夏の検査で内部被ばくが判明し、猪苗代町の飲食店で食べた山菜定食が原因の可能性があるとみて、調査地点を絞った。

 内部被ばくを防ぐため、消費者の最大の策は「食べる前に測る」こと。しかし、原発事故から八年目となり、市民が食品などを測定機関に持ち込む件数は年々減っている。放射能による汚染がひどかった那須塩原市では、二〇一二年度は市役所に二千八百件の持ち込みがあったが、一七年度は百六十件にまで減った。

 原発事故の八カ月後から同市内でボランティアで測定を続ける「那須野が原の放射能汚染を考える住民の会」の高嶋幸雄(ゆきお)さん(68)は「七年過ぎたから大丈夫だろう、という意識が危ない。田畑で採れた物は基準をクリアしているが、出荷制限が続く山菜やキノコは、食べる前に測定してほしい」と警鐘を鳴らしている。 (大野孝志)

◆採って売る人も被害者

<本紙の調査に協力した木村真三・独協医科大准教授の話> チェルノブイリ原発事故から30年以上たったウクライナでは、キノコやベリー類を採って売ることが、汚染地帯に暮らす人々の生業になっている。産地を偽装する例も多い。首都キエフの露店には、周辺の村々から放射能を検査せずに集められたキノコなどが並ぶ。福島や茨城などの山菜の問題は起こるべくして起きた。東電や国の責任で山菜などを管理できていない。採って売る人も、原発事故の被害者だ。

 

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