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【東京新聞フォーラム】

「子宮頸がんは予防できる」 パネル討論

 毎年一万五千人が発症し、三千五百人の尊い女性の命が失われている子宮頸(けい)がんをテーマとした東京新聞フォーラム「子宮頸がんは予防できる」が八月三日、東京都墨田区横網の江戸東京博物館ホールで開かれた。鈴木光明・自治医科大学教授は基調講演で「検診と予防ワクチンをうまく組み合わせれば絶滅も夢ではない」と、適切な対応で克服が可能なことを強調した。続いて鈴木教授を交え、衆院議員で自民党ワクチン政策に関する議員連盟幹事長の塩崎恭久氏、自ら体験者でもある女優の仁科亜季子氏とNPO法人子宮頸がん啓発協会理事長の難波ミチヲ氏の四人のパネリストが、日比野守男・東京新聞論説委員の司会で意見を交換した。

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体のこと語れる場を

子宮頸がん啓発協会理事長 難波ミチヲ氏

 日比野論説委員 ご自身の体験を伺います。

 難波ミチヲさん 去年たまたま受けた検診がきっかけで初期の子宮頸がんが見つかり、ことし一月に子宮を全摘出しました。私は四歳の子どもがいて仕事もある。知人の医療関係者に相談したら「初期の段階なので、術後も今まで通りの生活を送れるだろう」と言ってくれたので安心して手術に臨みました。

 ブログで「私は子宮頸がんになりました。自覚症状は全くなかったけど、たまたま検診で見つかった。だからみんな検診を受けようよ」と呼びかけたら「私も検診に行くわ」という連絡が三十人以上から来た。こんなふうに伝えればみんなも変わるし、みんなに言えるとこんなに楽になると実感して、NPO(民間非営利団体)を立ち上げました。女性がポジティブに検診に行ける環境をつくること、女性が体のことを語れる場をつくることが活動です。

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自分の体験伝えたい

女優 仁科亜季子氏

 仁科亜季子さん 発症したのは三十八歳のとき。子どもたちは六歳と八歳、せめて娘が十六歳になるまでは、意識だけははっきりしていたいと思い、がんと正面から向き合ってきました。

 入院後、最初に抗がん剤を患部に直接入れる瞬間は、おなかの中に熱湯をまき散らしたような状況で、病室に戻る前から激しい吐き気に襲われました。二回目の抗がん剤で髪の毛がほとんどなくなってしまいました。

 手術で子宮、卵巣、リンパ節を全摘し、がんは治りましたが、後遺症が残りました。術後はリンパ浮腫で、上から下までくびれのないゾウのような足になってしまいました。左足は今もむくみます。子宮や卵巣の近くには膀胱(ぼうこう)があります。膀胱に行く神経が手術で麻痺(まひ)してしまい、トイレに行きたいという指令が脳に来ないので、一時間半置きに必ずトイレに行きます。放射線治療で腸壁は鉛のようにかたくなり、うまく活動してくれない。ことし六月、腸閉塞(へいそく)になってしまいました。

 精神的にも再発するのではという怯(おび)えや女性としての喪失感があります。私のようなつらい思いをする女性が一人でも少なくなるよう、自分の体験を正直にお話ししています。

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公費助成 決断の時

衆院議員 塩崎 恭久氏

 塩崎恭久・衆院議員 親しい友人の何人かをがんで亡くし、がんに何とか克(か)ちたいという思いが募り、地元松山市でもがん対策活動をしています。

 ワクチンの「定期接種化」が一番安定的で、公費助成につながるのですが、そのためには予防接種法改正が必要です。それとは別に自民党は子宮頸がんワクチンの接種費用の公費負担、無料検診をマニフェストに掲げ、同じく公費助成実現を目指す公明党と議員立法を準備しています。性教育も含めて学校現場で子どもにどう説明して接種するか、教育面にも配慮した法案を自公両党でまとめ、今秋の臨時国会に出したい。

 日比野論説委員 昨年末にワクチンが発売されましたが、若い女性の関心はまだまだですね。

 難波さん 若い女性にとってがんはそれほど現実的な問題ではないのでしょう。四月九日(子宮の日)、名古屋でモデルの冨永愛さんを呼んでトークショーを行いました。時代のアイコンとなるような人が、日ごろ体にどう向き合っているかというリアルな話に「私も検診を受けてみようか」という意見が聞けました。

 仁科さん 私が活動を始めたころは、子宮という言葉が日の目を見ていなかったが、ワクチンができたことでにわかに脚光を浴び、ごく一般的なウイルスでなる病気だと認知され、子宮頸がんだったと公表する著名人もたくさん出てきました。このワクチンは神様から女性への今世紀最大の贈り物だと思います。

 鈴木光明・自治医大教授 日本の教育に欠けているのは、小中学校で身体のことを学ぶ機会がないことです。欧米では保健体育や科学の教科書にも子宮頸がんとかウイルスの話が出てきます。

 塩崎さん 税金をどう使うかという優先順位を決めるのが政治です。皆さんの意識を高めるためにもワクチンの公費助成を政治が決断しなければならない。少子化対策としても有効です。

 日比野論説委員 いろいろなワクチンの中で、なぜ子宮頸がんワクチンを優先するのですか。

 鈴木さん このワクチンはがんを予防できる唯一のワクチンだからです。イギリスやオーストラリアでは三年前から国レベルで接種が始まりました。

 日比野論説委員 日本ではワクチンに関しては、効果より副反応の方に目がいきやすいのですが。

 鈴木さん 確かにそういう傾向があります。日本で使われているこのワクチンは、海外で二例の死亡報告があります。一例は治験の例ですが、ほかの部位のがんを持った患者さん。もう一例は、市販後の例ですが、解剖によりワクチンと関係ないことが判明しており、大きな問題はないと思います。

 日比野論説委員 国に対し、ほかに望むことは。

 塩崎さん 新型インフルエンザのときもそうでしたが、子宮頸がんワクチンも外国製のため、何で外国のメーカーを優遇するのか、との意見があります。日本のメーカーを中長期的に育てますが、命を救うためには、まず今ある有効なものを使うことが大事です。

<子宮頸がん> 原因は性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染。女性の八割は感染するが、ほとんどの場合、自然に排除される。ところが一部の女性は持続感染の状態になり、がんへ進む。子宮頸がんが子宮入り口にできるのに対し、子宮体がんは子宮奥の内膜にでき、ホルモンバランスの崩れが主な原因。

 

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