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【東京新聞フォーラム】

「本の街・神保町の明日を考える」 第二部 パネル討論「神保町をこんな街に」

パネル討論する(手前から)永森進悟、井田隆、栄田浩己の各氏

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店主の好みを前面に さかえだ書店店主 栄田浩己さん

 南陀楼綾繁さん 古書組合主催の古書店入門講座はいつも満杯だとか。今、古本屋をやりたいという人は結構いるようです。古書店秦川堂四代目の永森さん、実感はありますか。

 永森進悟さん 東京組合だけでも、月の新規加入者が多いときは四、五人、ならせば一人、二人はいらっしゃいます。神保町でも後継ぎ問題はあまり話題になっていません。

 南陀楼さん 新刊でも書店を始める方が出てくるといいのですが、ターミナル駅の周辺に大型書店ができる一方で、街の本屋さんは厳しい状況のようですね。

 栄田浩己さん 僕は店舗を持っていましたが、無店舗注文配達に切り替えました。店舗時代から、お客さんから注文があった本を、神保町周辺に集まっている中小の取次会社、それを僕らは「神田村」といっていますが、そこで仕入れて注文の翌日か二日後にはお客さんに届けていますから、信用を得て、注文配達だけでもやれると思ったんです。

 本屋をやりたいという気持ちがあれば、僕のように無店舗だってできる。なるべく費用をかけないで、どこかの軒下を借りてでもできる。東京新聞の「サブカル入門」では、リヤカーにビジネス書の新刊を積んで売っている方も紹介されていました。

 南陀楼さんたちが始めた一箱古本市は本好きによる古本フリーマーケットですが、一箱でもそれぞれ個性がありました。これからの街の本屋はそういうものだと思うんです。いわば「店主の顔」が見える本屋がもっと増えて、仕入れに来る人が多くなると神田村も活気づくと思います。

 南陀楼さん 今のお話に出てきた取次というのは、簡単にいえば本の問屋さんです。「神田村」については、法律書専門取次の大学図書三代目で東京出版物卸業組合の理事長も務められている井田さんからご説明いただきましょう。

専門書対応など不変 大学図書代表取締役 井田隆さん

 井田隆さん 全国の出版流通の七割以上は、トーハン、日販をはじめとする大手取次が扱っています。それ以外にも全国的に中小の取次がありますが、出版社の多い神田神保町周辺は中小の取次が集中しているので、昔から「神田村」の名で親しまれています。神田村のそれぞれの取次は、大手のような総合取次ではなく、扱う出版社を絞ったり、専門書を扱うところが多いです。

 再開発で移転した店や、不況で倒産、廃業した店もあり、神田村にも変化がありますが、専門書を扱っていること、商品調達が早いこと、顧客の細かい要望にこたえられることは、神田村の変わらぬメリットです。

 栄田さん そのメリットのおかげで僕は今まで本屋を続けてこられました。神田村を有効活用して自分の好きな本を売る、つまり自分の思想、好み、趣味を前面に出すのが、これからの本屋のあり方ではないか。だとすれば、古書と新刊書をあわせて売っても別に構わないと思うんです。

 南陀楼さん 両方置いたほうが店のカラーを出しやすいと思います。大型書店では、多くの本がダーッと並んでいて何から見ていいか戸惑うことがあります。

 神保町を歩いていると、実は古本屋さんには意外と新刊本が置いてある。また最近は新刊書店でも、東京堂書店が古書コーナーを常設し、三省堂の神保町本店が隣に古書館をつくりましたね。

 永森さん 発行部数が少なく、重版も見込めず、絶版の運命をたどりそうな、ということは将来値上がりしそうな新刊本を仕入れている古書店さんもあります。

 南陀楼さん 古書店としての先見の明ですね。さて、神保町シアターや、神保町花月という吉本の劇場ができるなど、神保町にも新しい人の流れが生まれています。今まであまり来たことのない人を呼び込もうと、神保町は、大ヒット漫画のフェスティバルや、トーク・ライブ・映画上映とセットになった即売会など、積極的に企画を展開していますね。

イベントで魅力発信 秦川堂書店専務取締役 永森進悟さん

 永森さん 神保町の強さは、古書店はもちろん、大手出版社、取次、新刊書店の力を結集できることです。インターネットで間口が広がっていますし、若手の店主たちは神保町の強さを生かして、複合的なイベントもあわせて、神保町の「本の街」としての魅力を発信する何か面白い試みをしていきたいという気持ちを持っています。実は千代田区立千代田図書館からも、神保町の古書店が扱っている本の中で面白いもの、変わった資料を展示してほしいという提案が古書組合にあり、いろいろ展示を続けています。幸い展示には多くの反響があり、多くの方に、神田古書店街に興味を持っていただけるのではないかと期待しています。

 南陀楼さん 時代によって変わらないものもあれば、新しく変化するものもある。新刊書店、古書店、取次、図書館がネットワークを組んで融合化し、変化に対応しつつ、神保町のよさを発信していってもらいたいと思います。

 <さかえだ ひろみ> 1993年から杉並区上荻で無店舗注文配達の「さかえだ書店」を経営。取次での仕入れ記録「仕入れ日記」を月刊で発行している。

 <いだ たかし> 中央大学商学部卒業。大学図書は1924年創業の法律書専門取次業。法務図書センター代表取締役、東京出版物卸業組合理事長も務める。

 <ながもり しんご> 1990年駒沢大学法学部卒業。92年秦川堂書店入社、専務取締役。秦川堂書店4代目。

 

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