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【東京新聞フォーラム】

「港区歴史文化講座『秀忠・お江でたどる』」 パネル討論

パネルディスカッションする(左から)田渕久美子さん、安藤優一郎さん、山田覚さん(潟沼義樹撮影)

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戦国の世しなやかに

 田中哲男編集委員 大河ドラマ「江」がいま人気ですが、田渕さんは、江のどこに魅せられて、江を描く気になったのでしょうか。

 田渕久美子さん 江が体験したことは本当に悲惨なことが多いのですが、江について私なりに調べていくにつれ、自分の身に降りかかってくることを恨まずに、大きい心で受けとめて成長しながら、一つ一つ乗り越えていった女性で、その姿が見てくださる方たちの胸に希望や感動を与えることができるのではないかと思うようになりました。今は、江と心中するつもりで書いています。

 田中編集委員 江は厳しくも華麗な人生を歩んできたわけですが、江にまつわる人々についてお話しいただけますか。

 安藤優一郎さん 江は浅井長政と織田信長の妹のお市の方の間に生まれた浅井三姉妹の末っ子で、長女が茶々、後の淀殿で、次女が京極高次の妻となる初です。

 江は、秀吉の命により、三度の結婚を強いられます。最初の旦那さんの佐治一成とは一年も満たずに離縁させられ、二番目の豊臣秀勝とは死別。三番目が徳川秀忠で、秀忠が後に将軍になることで、江は御台所(みだいどころ)、つまりファーストレディーへの道を駆けのぼっていく。まさに徳川三百年の礎を築いた女性といえます。

 田中編集委員 三姉妹の人物像を描く上で最も苦労されたのはどういうこと。

 田渕さん ドラマというのは不思議なもので、だれが主人公になるかで、光が当たる方と、それを支える方、微妙に性格設定が変わります。今回は江が主人公ということで、茶々は内に強さは秘めているが、とても長女らしい穏やかな、たおやかな女性にして、初はちょっと身勝手に思えるぐらい自分のことばかりいっているが、とても情の濃い女性にしました。江は好奇心が旺盛で、信長に「自分らしさを貫け」といわれたごとく生きていきたいと思っているのに、自分の思うようには生きることができない女性にして、その人がどう生きたかを楽しみに見ていただけるような話にしていきたいと思いました。

 田中編集委員 港区には、江ゆかりの地としてどういうところがあるのですか。

 山田覚さん まず秀忠と江のお墓がある増上寺です。江が今の六本木周辺で荼毘(だび)に付されたときにお手伝いした教善寺、光専寺、深広寺、葬列が通ったといわれる麻布台エリアの我善坊谷、関ケ原の戦いの際に江が戦勝祈願した西久保八幡神社などもあります。江は春日局一派に毒を盛られて殺されて、それを隠すために火葬されたともいわれています。

 田中編集委員 江をめぐって港区ではいろいろな催しが行われていますね。

 山田さん 江と秀忠が眠る霊廟(れいびょう)の一般公開を十一月末までやっています。また来年三月いっぱいまで増上寺境内に観光インフォメーションコーナーを設置して、港区全体の観光資源の情報発信とともに、江のキャラクターを使った関連グッズも販売しています。東京タワーではNHKとタイアップして「特別企画 江展」を十二月二十五日まで開催しており、そこでは大奥の秘密を解き明かすアトラクションも用意してあります。さらに、江のゆかりの地をめぐるツアーも定期的に開催しています。夏休みに向けては、地図をもとに宝箱が置いてある場所を読み解く「江のゆかりの地をめぐる宝探し」というイベントも計画中です。区の広報紙やホームページでご案内していますので、ぜひご参加ください。

 田渕さん 私も港区民で、荼毘に付されたあたりに近いところに住んでいると思うと不思議な気がします。増上寺は、すごくいい気が充満していて、大好きな場所です。

 田中編集委員 江が初めて大奥をつくったといわれていますが、大奥とはどういう存在だったのですか。

 安藤さん 簡単にいえば、次の将軍が生まれ育てられる空間です。当時は跡目争いが非常に激しくて、次の後継者をきちっとつくっておくことが平和につながるわけです。そういう空間を最初につくり徳川三百年の歴史を続けたという意味では、江の役割は非常に大きいと思います。

 田中編集委員 江のキャラクターを港区の活性化につなげていくために、具体的に考えていることは。

 山田さん いろいろなグッズに加えて、老舗和菓子店による江のキャラクターを使った和菓子、赤坂で百年の歴史のある飲料メーカーによる「江姫」ブランドのビール、ホテルの特別宿泊パック等々、さらに、創業二百年の酒蔵が百年ぶりに酒造りを再開し、江姫をラベルに使った紅白の濁り酒を発売する予定です。

 田中編集委員 これから江はどんな人生を歩んでいくのでしょうか。

 田渕さん 両親のかたきである秀吉と茶々が結ばれたことに対して、「許せない」と怒りながらも許していく江の前に、お待ちかねの秀忠がいよいよ出てきます。「嫌なやつ」とお互いが思うような出会いをして、最後は夫婦としてかたく結ばれていく過程をドラマとして楽しんでいただければと思います。秀忠は、大き過ぎる父を持ったつらさを抱えた人物として描きました。秀忠の向井理さんは本当にすてきな方ですよ。そういう夫を江はどう支えたのか。江の成長とあわせて、楽しんで見ていただきたいですね。

脚本家 田渕 久美子さん

 たぶち くみこ 島根県出身。出版社勤務、塾講師、プログラマーなどを経て1985年デビュー。視聴率が高く、ブームとなった2008年のNHK大河ドラマ『篤姫』でも脚本を担当した。

歴史家 安藤 優一郎さん

 あんどう ゆういちろう 千葉県出身。文学博士。江戸をテーマとする執筆・講演活動を展開。NHK文化センターなどの講師を務める。主な著書に「江と徳川三代」。

港区観光協会事務局長 山田 覚さん

 やまだ さとる 東京都出身。内外のホテル、外資系航空会社で営業、マーケティングおよび市場開発に長年携わった観光ビジネスのプロ。

 

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