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【東京新聞フォーラム】

「マンガ家が描く原発と新エネルギー」

「マンガ家が描く原発と新エネルギー」について話すパネリストたち=横浜市中区の日本新聞博物館で(淡路久喜撮影)

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 東京新聞は横浜市中区日本大通の日本新聞博物館で七月一日まで開催中の「一枚マンガの原発と新エネルギー展」に合わせ、同博物館と共催で五月二十六日、東京新聞フォーラム「マンガ家が描く原発と新エネルギー」を開いた。同展に出品の下谷二助さん、しりあがり寿さん、二階堂正宏さん、チョン・インキョンさんがヒサ クニヒコさんの司会でパネル討論を行った。東日本大震災による東京電力福島第一原発事故をマンガ家の視点で考えるのが狙い。当日は即興のマンガを披露したり、同展に出品した自作を中心にマンガ家独特の個性あふれる意見交換もあり、百二十席で満席の聴衆は熱心に聴き入っていた。

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【主催者あいさつ】東京新聞事業局長 森要造

 一枚マンガの展覧会とシンポジウムも、3回目を迎えました。昨年3月11日の東日本大震災、それに続く原発事故により、わが国のエネルギー政策は根底から見直しを迫られています。そういう状況の中、34人のマンガ家に「原発と新エネルギー」というテーマで力作を寄せていただきました。パネル討論では司会とパネリスト4人のマンガ家、イラストレーターの方たちにより、大震災から得られた教訓、後世に伝えていくべきこと等々、大いに語り合っていただきたいと思います。

【パネル討論】視点を変えると…

<司会>ヒサ クニヒコさん 1944年東京都生まれ。66年慶応大法学部卒。マンガ集「戦争」で第18回文春漫画賞。イノチ、自然、戦争、社会などをテーマに一こまマンガを描く。子供向けの絵本も多い。

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 ヒサ クニヒコさん マンガ展に出されているご自分のマンガについての説明をしてください。

 下谷二助さん 「電気屋」は、焼きイモ屋の設備を使って原子力発電はできないかというオッチョコチョイな提案です。

 次は「電気男」。母は電気ナマズ、父は雷オヤジです。こんな交配が上手にいけば、自家発電する新人類の出現も夢でないかも。当然、人間が醜くなるというリスクの覚悟は必要です。

下谷二助さん 1942年東京都生まれ。63年日宣美展奨励賞受賞を機にイラストレーターに。諧謔(かいぎゃく)とアイロニーをテーマにする。91年に年鑑日本のイラストレーション作家賞受賞。

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 ヒサさん 原発も、自然にはないものを人間がつくってきたわけですね。

 下谷さん 自然というものはそんなに効率のいいものではなくて、あり得ない交配によって得られる、さまざまな産業的なエネルギーとか電力というものは、やはりどこか狂っているといえるのじゃないですか。

 私は車も持ってなくて、普段はほとんど歩きですし、携帯も持っていません。朝の6時ごろに起きて明るいうちに仕事をして、ものすごく省エネ生活をしています。だから、電気代はびっくりするぐらい安い。原発に頼らなくてもいいように、一人一人ができる範囲でライフスタイルを変えるべきだと思います。

しりあがり寿さん 1958年静岡市生まれ。81年多摩美大卒。85年「エレキな春」でマンガ家デビュー。朝日新聞で「地球防衛家のヒトビト」を連載中。題材は時事ネタ、家庭ネタから哲学、文学まで幅広い。

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 しりあがり寿さん 「まさかの“7”」は、原発が安全だ、安全だといっても、しょせん想定震度の中での話で、いつ想定を超える地震が来るかわからないという怖さを言いたかった。「自転車発電少女の朝」は、将来、こういう形で発電してトースターを動かすようになったら、また新しいドラマが生まれるのではないかと思って描きました。

 私は昨年4月に被災地に行ったんですが、何が一番変わったかというと、自分が行って見たものだったら、それがいかに一部のことでしかなくても、想像ではなくて真実なので、描いてもいいんだという自信がつきました。

 二階堂正宏さん 人類は火を使うことでいろいろ進歩してきましたが、原子力というのは過渡期のもので、最終的には自然・再生エネルギーが主役になっていくだろうと思います。「禁断の木の実」は、そういう時代が来ることを願って描きました。「政治に対する国民の憤りをエネルギーに換えて発電するシステム」は、新エネルギーで、これは特に日本には無尽蔵にあって、輸出できるかなと。

二階堂正宏さん 1948年宮城県生まれ。双葉社漫画アクション編集部を経てマンガ家に。92年「極楽町一丁目」で日本漫画家協会賞大賞受賞。乱ツインズ(リイド社)に「大忠臣蔵」連載中。

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 ヒサさん ということは、政治に対しては非常に怒っているわけですね。

 二階堂さん 特に政治家の対応の右往左往ぶりには怒りっ放しですが、マンガを見たら、つい笑ってしまう。笑いは健康によいそうで、それでストレスが少しは解消されるといいなと思っています。

 ヒサさん チョンさんの「遺伝子工学の快挙」は、いきなり放射能の核心に触れたマンガですね。

 チョン・インキョンさん この通りになったら困るけれども、「原発事故にもビクともしない人類の誕生です」ということで、バカバカしい解決方法を提示して皮肉りました。「芸術で省エネ」は、ゴーギャンのタヒチを描いた作品を見ながら、暑苦しいなといつも思っていたので、これが冬に展示されたら暖房は要らないなと。

チョン・インキョンさん 韓国ソウル生まれ。芸術博士。2004年第6回京都国際マンガ展グランプリ、06年第35回日本漫画家協会賞特別賞、08年京都市芸術新人賞を受賞。現在、京都精華大学非常勤講師。

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 昔は冷房なんてなくて、暑かったら、シャワーを浴びて、スイカを食べて、寝転がっていたら済んでいたのに、冷房ができたら、それに頼ってしまって体がおかしくなってきている。そんなに電気を使わない昔に戻ったほうがいいと思いますね。

 日本は大変な原発事故を経験して、いまだに収束も方向性も定まらない。私は外国人ですが、すごい歯がゆさを感じています。

 ヒサさん 最後に私の絵ですが、「貧者の一灯−国破れて村残る−」は、あり余る電化製品はガラクタになって、最後は明かりが一個だけあれば、人間の文化としては最低限いいんじゃないかと。「メヴィウスの輪・けっきょく同じだった…」は、原発は平和利用、原爆は悪い使い方で、この二つは違うものだとなっていたが、放射能ということから言うと、結局は同じ面にあるんじゃないか。そういう思いを入れて描きました。

 放射能というのは、何万年先の子孫にも影響を与える大きな問題です。同時に、それを許してしまうようなわれわれの電気の使い方、ライフスタイルも考えなければいけない。このシンポジウムを、原発をいろいろな角度から考える一つのきっかけにしていただければと思います。

 

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