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【東京新聞フォーラム】

「トップアスリート・スポーツフォーラム スポーツのチカラ」

野球の魅力について語る元プロ野球選手の山崎武司さん(中)と宮本慎也さん(右)。司会は東京新聞の鈴木運動部長(左)=3月22日、東京都渋谷区で

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 「トップアスリート・スポーツフォーラム スポーツのチカラ」(東京都スポーツ文化事業団、東京都主催、東京新聞共催)が三月二十二日、東京都渋谷区の東京体育館第一会議室で東京新聞フォーラムの一環として開催された。元プロ野球選手の山崎武司さん(45)、宮本慎也さん(43)に、鈴木遍理(とおみち)・東京新聞運動部長の司会で、スポーツの魅力と未来について語ってもらった。

◆元プロ野球選手対談 山崎武司氏×宮本慎也氏

<野球人生>野村元監督に感謝

 鈴木 二人の近況から伺いたいと思います。山崎さんは昨日(三月二十一日)引退試合をしましたが感想は。

 山崎 久しぶりに中日ドラゴンズのユニホームを着て、ナゴヤドームでプレーをしたんですけれど、違和感なく楽しめました。

 鈴木 宮本さんは、昨年十月の引退試合での「プロ野球をやってきて苦しかった」というスピーチが印象に残っているんですが。

 宮本 「苦しかった」を「楽しくない」とよく誤解されますが、野球は楽しいけれど、余裕を持ってプレーができなかったということです。辞めると発表してから、すっきりして、いいプレーを見せたいという気持ちだけになり、歓声もすごくて最後の方は本当に楽しく、少し余裕を持ってできたと思います。

 鈴木 野球人生を振り返りながら、スポーツの魅力というのを少し探っていきたいと思います。野球を始めたきっかけは。

 山崎 小学二年生の時に、親の勧めで何かスポーツをやってみないかと言われ、身近にあったのが野球でした。

 宮本 父が長嶋茂雄さんの大ファンで、小さい時から映像を見せられて、自然と野球に入っていきました。

 鈴木 山崎さんは愛工大名電を出てすぐにプロ(中日)へ。キャッチャー時代に広島の正田選手に思いっきり走られましたね。

 山崎 一試合で五盗塁決められた。シーズン終盤で、広島の山本監督が星野監督に「きょうは若手のキャッチャーを出してくれよ」と言ったら僕だったんです。五盗塁され正田さんがこの年の盗塁王になった。当時は八百長といわれ、つらかったですね。しかし、それがきっかけで外野手になれたので、僕にとっては良かったです。

 鈴木 宮本さんはプロ(ヤクルト)入り一年目から監督が野村克也さんだったのが、すごく良かったのでは。

 宮本 野村さんが「ゴロを捕るのがうまいのを採ってくれ」といって、それが僕だった。野村さんが最初の監督でなかったらたぶん試合に出られなかったと思いますね。毎日怒られましたが、足を向けて寝られないぐらい感謝しています。

 鈴木 野村監督の楽天二年目でした、山崎さんのホームラン王と打点王は。

 山崎 「自分の本能でやってるからダメなんだよ、もっと頭を使え」と怒られまして、配球面、ピッチャー心理、どういう場面かを全部考え、準備してバッターボックスに入ることを教わったんです。僕は本能でやるタイプでしたが、考えてやれるようになって最後の伸びしろがあったかなと思います。

<五輪>7回制 避けたい

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 鈴木 オリンピック、パラリンピックが二〇二〇年に東京に来ます。ちなみにここ東京体育館は卓球の会場になります。記憶に新しいところでソチ・オリンピックのどんなところに感動されましたか。

 山崎 金メダルは一つで、銀メダルが四個。重圧に少し負けてしまった銀メダルだったのではないでしょうか。非常にもったいなかったなという印象ですね。

 宮本 印象に残ったのは上村愛子選手。メダルには届かなかったが、彼女の顔を見ていると満足感がありましたね。あとは真央ちゃん。ショートプログラムでは失敗しましたが、フリーで開き直って自分の競技ができる強さというのを見せてもらった。メダルは取れなかったけれども、すごく印象的でしたね。

 鈴木 オリンピックから野球が外されました。まだ少し望みがある気はしますが、野球が入ってほしいという思いは。

 山崎 当然、思います。ただ7回制にして存続という動きもあるようですが、9回の中での駆け引きが試合を決めます。今の野球でオリンピックに組み入れてもらい、選手がスピーディーにやっていければと思いますね。

 宮本 7回制だと、投手をどんどんつぎ込めば点を取られない。7回が終わり、タイブレークでは野球ではなくなるので、すごく反対ですが、東京オリンピックで野球がないのは寂しい。最後の最後、7回ならというなら仕方がないのかな。

<復興支援>「全日本」で助けあおう

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 鈴木 被災地の復興のために、何ができるのかをお伺いします。山崎さんは大震災の時は楽天でしたね。

 山崎 埼玉県戸田市にあるヤクルトの二軍球場で試合をしていて、地震に遭いました。テレビで津波を見て、家族がどうしているのかが一番心配でしたね。一カ月後に仙台に帰りましたが、被災地を見て野球ができるかどうか考え、開幕を遅らせるべきだとチームとして判断したんです。津波に遭った所は、いつも見慣れた場所の色が黒なんです。あの光景を見た時に野球のことはまったく考えられませんでしたね。

 宮本 各球団の選手会が声をあげて、通常は三月末開幕のところをセ・パ両リーグで四月十二日に同時開幕とすることができたのは、素晴らしい行動だったと思います。

 鈴木 引退試合のスピーチで、被災地の皆さんへのご支援を忘れずにいただきたいと話しましたよね。

 山崎 三年もたつと忘れられて、人ごとになってしまいます。日本は地震国なのでいずれまた大きな地震が来るわけで、そうなったとき、慌てずに、事故のないようにして、もし被災されたときにはオールジャパンで助けあっていこうということを伝えていきたいなと思うんです。

 鈴木 スポーツが被災者の方々にできることはすごく多いように思います。昨年の楽天の優勝もその一つですよね。

 山崎 楽天には一年目から七年間いましたけど、九年目で日本一をとるとは思いませんでした。まだまだ震災で気を落としている方が多いですから、その中で優勝したことで非常に盛り上がって良かったと思います。

 やまさき・たけし 元プロ野球選手(中日ドラゴンズほか)現役生活27年で通算403本塁打を放ち、セ・パ両リーグで本塁打王に輝いたスラッガー。楽天時代に被災地支援活動が認められゴールデンスピリット賞を受賞。

<引退後は>夢は監督 球団を強くしたい

 鈴木 野球選手としてのステージを終えましたが、引退して心残りは。

 山崎 野球に関してはあまりないですね。やり切った感もないですが。

 宮本 あるとすればもう少し優勝したかった。僕の優勝はほぼ前半で終わっているんで、寂しい気持ちがありますが、現役選手としてはよくやったなと思うので悔いはないですね。

 鈴木 いつか再びユニホームを着る日が来ると思いますが、山崎さんに「楽天と中日から同時に監督のオファーを受けたらどちらを選びますか」という質問が寄せられています。

 山崎 どちらもやってみたい気持ちはありますが、できればドラゴンズを先にやりたい。老舗球団ですからその中で野球をもっともっと知って、球団の歴史の浅い楽天に行って球団をつくり上げたいという夢はあります。

 鈴木 宮本さんはヤクルト一筋ですが、ヤクルト以外から監督のオファーが来たら、どうしますか。

 宮本 ある程度年数がたってヤクルトから話がない場合は、考えたいと思います。まずはヤクルトを強くしたい気持ちが強いので。いずれ監督という夢はありますが。

<体のケア>長くやる人 酒を飲まない

 鈴木 お二人とも四十歳を過ぎても現役でできるほど体のケアはしっかりされていたと思いますが、何か秘訣があったら教えてください。

 山崎 最近、感じているのは自分の体なのに、その状態が分かっていない選手が多いということ。スペシャリストのコーチが多くいますので、それに全部頼ってしまう。四十歳以上まで野球をやった選手というのは、自分で自分の体のコントロールをしています。例えば、けがをしそうになったときでも「ここまでは痛くてもできるだろう」と判断します。若い選手は自分の限界の線引きが分からなくて、人に決めてもらう。僕たちはそれができたということです。

 宮本 僕らのころは「できるのか、できないのか」と言われ、できないと言えばファームです。だから相当のけがでも出ていました。その中で、これぐらいなら大丈夫ということが分かるようになった。あとは長くやる人はあまりお酒を飲まないですね。

 山崎 普通は全盛期から緩やかに体力とか技術が落ちてきて、もうだめだなと思って辞めていくのですが、お酒をよく飲む人は絶頂期から一気に落ちる選手が多い。例外もありますが。

<セ・パ予想>セは巨人、2〜5位は混戦

 鈴木 今年のセ・パ両リーグのペナントレースの予想をパ・リーグから。

 宮本 ロッテ、楽天、ソフトバンク、西武、オリックス、日ハム。ソフトバンクは厚みがありすぎて不平不満が出そうな雰囲気がある。そうなった場合を思って三位にしましたが、そうでなかったら、ぶっちぎりです。

 山崎 僕はソフトバンク、楽天、ロッテ、オリックス、西武、日本ハムです。

 鈴木 セ・リーグは。宮本さんにヤクルトの順位から。

 宮本 最下位です。これは外さないと思います(笑)。優勝は巨人、二位から五位は団子ですが中日、広島、阪神、横浜。巨人は先発ピッチャーがちょっといないが一つ抜けていると思います。

 山崎 宮本と一緒です。中日を二位にあげたのは巨人以下の五球団では、中日がAクラスにいた経験が一番あるから、僅差のゲームを取ってくると思ってます。広島がバランスが良くなってきたので、今年は面白いかなと思います。

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 対談後、両選手が提供したサイン入りグッズのチャリティーオークションが行われた。この売り上げと募金で寄せられた総額二万二千円は、東京新聞社会事業団に寄託された。

 <みやもと・しんや> 元プロ野球選手(東京ヤクルトスワローズ)現役生活19年で通算2133安打、ゴールデングラブ賞10回受賞の球界きっての攻守の名手。WBCやオリンピックの日本代表として国際大会の舞台で活躍。

 <やまさき・たけし> 元プロ野球選手(中日ドラゴンズほか)現役生活27年で通算403本塁打を放ち、セ・パ両リーグで本塁打王に輝いたスラッガー。楽天時代に被災地支援活動が認められゴールデンスピリット賞を受賞。

◆都スポーツ文化事業団 大平久夫・スポーツ事業担当部長

 本フォーラムでは、各分野のトップアスリートの方々に、ご自身の経験を踏まえて、スポーツの持つ力、可能性、魅力、エピソードなどをお話しいただきます。参加したみなさまには、これを契機にスポーツへの興味、関心をより一層高めて、スポーツライフの充実に役立てていただきたい。そして、東京都全体で目指している日頃のスポーツ実施率70%の実現につながることを期待しております。

◆東京新聞・水野和伸常務取締役

 本日のゲストの山崎武司さん、宮本慎也さんは40歳を超えても現役で活躍された大変味のあるおふたりです。今年登録されたプロ野球選手で、40歳以上は10人だけです。宮本さんは40歳5カ月で2011年4月のセ・リーグ月間MVPも取っています。今日は現役を退いてからの選手の心境や、体の健康と俊敏な運動神経を保つ秘訣(ひけつ)などを聞かせていただければと思います。

 

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