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【東京新聞フォーラム】

「映画『日本のいちばん長い日』で考える日本が歩んだ終戦への道」

映画「日本のいちばん長い日」について話し合う原田眞人監督(右)と加古陽治・本紙文化部長=東京都新宿区の新宿明治安田生命ホールで

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 戦後七十年企画として、戦争と平和を見つめる東京新聞フォーラム「映画『日本のいちばん長い日』で考える日本が歩んだ終戦への道」(協力・松竹)が七月十六日、東京都新宿区の新宿明治安田生命ホールで約三百人を集めて開催された。第一部は今月八日公開の映画「日本のいちばん長い日」を上映。続いて第二部で同作品の原田眞人監督をゲストに迎え、本紙の加古陽治・文化部長をコーディネーターに対談が行われ、映画に込められたメッセージや俳優たちの撮影秘話などが披露された。

【主催者あいさつ】大島宇一郎・東京新聞代表

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 今年は戦後70年にあたり、みなさまには戦争と平和について考えてほしいと今回のフォーラムを企画しました。この映画「日本のいちばん長い日」は、終戦に向けての政府、軍人たちの思いが如実に描かれています。映画を通じて平和の大切さを感じ取ってもらえればと思います。第2部の原田監督と本紙加古文化部長の対談では映画に込められたメッセージや製作秘話をぜひお楽しみください。

【対談】加古陽治・本紙文化部長×原田眞人監督

 加古陽治文化部長 最初のシーンが東条英機のアップで印象的でしたね。

 原田眞人監督 開戦の責任は東条にあり、それを昭和天皇が収めました。最初は東条、最後は昭和天皇で締めくくりたかった。

 加古 映画にしようとした始まりは?

 原田 十八歳だった一九六七年、岡本喜八監督「日本のいちばん長い日」を見ました。監督のファンでしたが、軍人の髪が長くて、阿南惟幾(あなみこれちか)陸軍大臣を演じた三船敏郎さんが自分の美学を追求しすぎた内容に、好きになれませんでした。それから阿南、鈴木貫太郎総理に関する本を読みあさり、心の準備をしていたんです。

 加古 監督自ら脚本を書いていますね。

原田眞人監督

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 原田 半藤一利さんの原作に忠実に、という基本線に沿って阿南、鈴木貫太郎、昭和天皇の関係という自分が最も描きたかったことを軸に書きました。

 加古 阿南は、やはり役所広司さんしかいない?

 原田 脚本段階から阿南は役所さん、鈴木貫太郎は山崎努さんと考えていました。家庭人としての阿南を演じてもらいたかったんです。

 加古 本木雅弘さんが昭和天皇を正面から演じました。

 原田 優柔不断でなかなか決断してくれなかった(笑)。彼の背中を押してくれたのは(本木の義母の)樹木希林さんでした。「原田監督の作品だから出なさいよ」と。役作りでも眼鏡を銀縁にするか、縁なしにするかで迷いに迷っていました。二〇〇六年のロシア映画「太陽」ではイッセー尾形さんが形態模写のような昭和天皇の演技をして不快でしたが、今回は品格を表現しました。玉音放送を読む場面は一部だけですが、彼は全部読めるように練習していました。

 加古 (徹底抗戦を主張、決起した)畑中少佐の松坂桃李さんは。

 原田 非常にいい感性を持ってますね。阿南とはいわば疑似親子関係にある立場を、例えば阿南が「納得できぬなら、まず阿南を斬れ」と諭すシーンでは血管が破裂しそうなほどの演技でした。「ゴッドファーザー」で、アル・パチーノが一気に化けたことを思い出しました。

 加古 英語のタイトルは、「THE EMPEROR IN AUGUST」ですね。

加古陽治・本紙文化部長

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 原田 欧米では天皇に戦争責任があると思う人もいて、どう受け取られるか分かりませんが…。

 加古 (終戦前夜)阿南が陸軍省に戻ると、ベラ・リンの「We’ll Meet Again」が流れていましたね。

 原田 陸軍省は、衛兵もいない状況だから、敵性音楽が流れても不思議じゃない。あの曲はスタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情」の最後にも使われ、広島、長崎に原爆を落とされた日本の状況や阿南の心情にも合います。

 加古 戦後七十年の節目の年に、この映画が公開される意義は?

 原田 終戦は「軍をなくし、国を残す」ことでした。安倍総理がこの映画を見たら、都合の良い解釈をするかもしれませんが、今の日本がどこから始まったか。私は憲法が押しつけとは思わない。七十年前の国民はどう考えたか。この映画が若い世代が歴史を見直し、考えるきっかけになればいいと思います。

 加古 負の側面も含めて歴史から学ぶことが大切ですね。この映画をごらんになった皆さんは、原田監督の平和へのメッセージをぜひ周囲の人たちにお伝えください。

 <はらだ・まさと> 1949(昭和24)年、静岡県出身。79年「さらば映画の友よ インディアンサマー」で監督デビュー。95年「KAMIKAZE TAXI」で国際的評価を受け、2002年「突入せよ!『あさま山荘』事件」、08年「クライマーズ・ハイ」など話題作を手掛ける。「わが母の記」(12年)で第35回モントリオール世界映画祭審査員特別グランプリを受賞。最新の公開作は「駆込み女と駆出し男」(15年)。

【映画あらすじ】

 1945年8月15日、終戦に至った政府、軍の動きを描いた半藤一利原作のノンフィクション「日本のいちばん長い日」を映画化。軍が置かれた状況に苦悩する阿南惟幾陸軍大臣(役所広司)、長く侍従長を務めた鈴木貫太郎総理大臣(山崎努)、「聖断」を下した昭和天皇(本木雅弘)、徹底抗戦を唱える畑中健二陸軍少佐(松坂桃李)らを軸に戦争終結に向けての真実のドラマが展開される。公開は8月8日。

 

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