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【群馬】

<志尾睦子のそふとフォーカス> (1)好きこそものの上手なれ

今年も企画した戦争特集で、「野火」の塚本晋也監督(右)とトーク=高崎市の高崎電気館で

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 座右の銘、というほどのものではないけれど、大切にしている言葉がいくつかある。大切にしていた、という方が正しいかもしれない。最近、振り返ってみればそんな人生だな、と気がつく年ごろになったようだ。その中の一つに「好きこそものの上手なれ」がある。私は子どものころから何をするにも不器用で、覚えも悪く、人がすぐにできることに人一倍時間がかかる方だった。そのことを気に病み落ち込む私を見かねては、母はよくこう声をかけてくれた。

 本来は、好きなものには努力をするから必然的に上達が早い、という意味のようだけれど、母のその言葉は、好きな気持ちを大事にしていればいつかは上手になるから大丈夫よ、という励ましに聞こえた。そう言われたところで、じゃあ、大丈夫だ、と安心できたわけでもないのだが、自然とその言葉は私の中で威力を発揮していた気がする。

 映画の仕事についているのも、その言葉に導かれたからだと今は思っている。こんな仕事をしていると、さぞやすごい映画少女時代を過ごし、その蓄積と若いころからの感性が今をつくっているのだろうと思われがちだが、映画を見始めたのは遅く、二十歳をすぎてからだ。確かに、そこからの吸収力は自分でも驚くほどだった。瞬く間に映画の仕事についてしまった、という感じ。映画祭のプログラミングをし、映画館を造り、あらゆる角度から映画に関わるようになった。最初から全てがうまくいったわけではもちろんないけれど、好きなものを大事にしていたらこうなった。

 本を読むのが好きで、言葉を紡ぐのが好きで、子どものころは詩とか散文とか勝手気ままに書いていたら、映画の解説を書くという仕事につけるようになった。写真集を眺めるのが好きで、自分でも撮るようになり、イベントではカメラを構えカメラマンになることもある。時には撮った写真を文章と一緒に掲載してもらうようにもなった。これこそ「好きこそものの上手なれ」。

 好きな気持ちを大事に、大切に過ごすと人生は開ける。そんなふうに毎日を過ごす中で感じたことを、ここでもお伝えしていきたい。(シネマテークたかさき総支配人)

 第1、第3、第5日曜日に掲載します。

<志尾睦子(しお・むつこ)> 1975年、高崎市生まれ。県立女子大在学中に高崎映画祭のボランティアスタッフとして参加した。2004年からプログラムディレクターとなり、映画祭プログラム全般を企画(現在はプロデューサーに改称)。同年12月に県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」(同市あら町)を開館、支配人となる。10年にNPO法人たかさきコミュニティシネマの代表理事、14年からシネマテークたかさき総支配人となり、高崎フィルム・コミッション代表を務めるほか、高崎電気館(同市柳川町)の運営にも携わる。

 

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