東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 群馬 > 記事一覧 > 10月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【群馬】

<志尾睦子のそふとフォーカス> (2)秋深き隣は何をする人ぞ

近所で見つけた秋。たわわに実った鈴なりの柿

写真

 今年、人生初の町内班長をしている。そのおかげか、この地に住んで二十五年以上が過ぎたが、この半年というもの、日々が発見で面白く感じている。これまでは班長はおろか、ご近所づきあい自体も全て親に任せきり、自分がやることなど想像もしていなかったけれど、志尾家も代替わりをしたおかげで、今年私に当番が回ってきたというわけだ。隣近所数軒のお宅の方は時折顔をあわせるけれど、町内とはいえ遠い方にはめったに会うこともない。そんな中での班長仕事が務まるのか不安ではあったが、必ず順番にやるもの、という約束にのっとり今年の春にその責をついだ。

 毎月二回、回覧板を配達し広報紙を各戸へ届ける。他にも班長として本来の仕事は多々あるのだが、他のことが時間的にできないこともあり、皆さんにその辺りはご理解いただいて、できることを務めさせていただいている。

 この定期的な仕事というのが、やってみると大変でもあり、時間の流れを如実に感じさせてくれるので面白くもある。二週間というのはつくづくあっという間に過ぎ去るものなのだと実感する。配達に行くごとに、各家庭の庭の木や花壇の花の装いも変わっている。歩いているからその香りも楽しめるし、時には軒先に遊びに来ている小鳥に出合うこともある。鳥の種類で季節を感じるのもまた面白い。日々生活をしている場所なのに、こんなふうに近所を歩き回ることもこれまでなかったのだなと気付く。

 時間の流れもそうだけれど、ちょっとした驚きに出合うことも少なくない。公園のアジサイが九月に一株だけ咲いているのに気付いた時はとても驚いた。車で走り去っていては気付かなかっただろう。梅雨時季に皆きれいに咲きそろったと思っていたのに。自然界にはこんなこともあるものだ。植物だけではない。ご近所の家族構成はだいたい把握しているものの、数年顔を合わせていないと、お子さんなんて急激に成長していて、一瞬誰だかわからずに驚いたりする。

 「秋深き隣は何をする人ぞ」。広報紙の束を手にしながらその句が浮かんだ。私もようやく、芭蕉(ばしょう)の気持ちがわかる年ごろになったみたいだ。(シネマテークたかさき総支配人)

 第1、第3、第5日曜日に掲載します。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報