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【群馬】

<志尾睦子のそふとフォーカス> (3)芸術は長く、人生は短し

びっしり詰まった上映スケジュールで、読むのも大変な映画祭の看板

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 秋風が吹く十月の連休明け、山形に赴いた。山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF)に参加するためだ。二年に一度行われるアジア最大級のドキュメンタリー映画祭は、国内に数ある映画祭の中でも群を抜いた知名度と人気を誇る。

 ドキュメンタリー映画に特化したこれほど大きな規模の映画祭は他になく、しかも地方開催というのは大きな特色だ。YIDFFは一九八九年に山形市の市制百周年記念事業として始まり、その後、NPO法人化されて独立した。二年に一度の開催で、今年十五回目を数えた。

 最新のドキュメンタリー映画を上映する「インターナショナル・コンペティション」、アジアのフレッシュな才能が集結する「アジア千波万波」が主軸となり、世界各国からエントリーされて来る。二部門合わせるとその数、約千八百本に上る。映画祭で上映できるのは四十作品前後だから倍率四十五倍。恐ろしい数字だ。勝ち抜く方もすごいけれど、選者の苦労も計り知れない。そして上映決定したものは字幕を付け、上映素材にする。日本語字幕だけではない、国際映画祭だから英字も必要。カタログも全て日本語と英語表記。それだけのことをするわけだから二年に一度でもやっとのことだろう。作品のアーカイブやイベント業務もこなすから運営陣営には多くの人が関わっているが、専従職員は数人という世界だ。数人を軸に、期間限定の職員やボランティアの力が集結し、運営されていく。YIDFFからは常にものすごいエネルギーが放出されている。一週間にわたって開催される間、その熱量が映画祭開催エリアを取り囲んでいると実感する。エネルギーは、栄養になる。あそこに行くと俄然(がぜん)元気になる。

 だから、映画人はこぞってこのYIDFFに出かける。ドキュメンタリー作家、劇映画監督、プロデューサー、俳優、劇場経営者も配給会社の人も上映者も、もちろん映画ファンも、一気に山形に集まる。引き寄せられると言っていい。会場に行く道中、何人もの知り合いに声をかけられた。初めて行ったのは九九年、まだ学生だった。知り合いなんて誰もいなかったのに。歳(とし)をとったものだ。

 「芸術は長く、人生は短し」。自分はあと何回ここに来られるだろうと考えた。(シネマテークたかさき総支配人)

 第1、第3、第5日曜日に掲載します。

 

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