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【群馬】

<志尾睦子のそふとフォーカス> (5)歳月人を待たず

月夜の屋外上映を終え、スクリーン前で挨拶する中学生たち=沼田市の沼田公園で

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 しばらく降り続いた雨が一段落し、暖かさの戻った十一月三日、私は沼田公園にいた。十年来、この日は毎回違う場所で過ごしている気がする。秋は行事が多くなる季節でもあり、加えて文化の日は、各地でいろいろなイベントが催されるから、何かしら仕事で出かけることが多い日だ。

 今回の業務は屋外上映。沼田青年会議所の青少年委員会が主催する「利根沼田夢大賞2017」で金賞を取った中学生の夢、「自然の中で映画」をかなえるお手伝いだった。

 いつもお世話になっている機材会社の社長の指導のもと、広場にスクリーンを一から立て、電気を通し映写機をセッティングして上映に備える。この社長の仕事がいつ見てもほれぼれする。当然と言えば当然だが仕事に対する姿勢は厳しく、スキルも高く、隙のない見事な上映セッティングをする方だ。どんなところでも、どんな風にでも仕上げてしまう。それがとても美しい。コードがぐしゃっとしているとか、ひもがたるむなんてことは一度もない。機材を積み込む車の中もパズルのようにきちっと機材が詰め込まれていて見事だ。

 高崎映画祭の初期から上映全般に携わるその方とは、それゆえ私も長いおつきあいになる。背中から数々のことを教えていただいたが、社長との時間はいつもつかの間だ。映写機を設置し、スクリーンを張ったら社長は他の現場に行き、こちらの上映が終わる頃に戻ってきて撤収する。十数年そんな風だったから、過日もセッティングしたら移動されるだろうと思っていた。すると、他の現場は若いのに任せて自分は今日ここに終わるまでいるとおっしゃる。丸一日いてくださるなんて初めてのことだ。若い子が育ったのだなと思うのと同時に、体力が落ちたから現場の掛け持ちなんてできないよと笑う社長に驚く。聞けば六十八歳になられたというからさらに驚く。ついでに私の年齢を言ったらたいそう驚いてくれた。

 いつの間にかそんなに歳(とし)をとったかね、と互いに笑いながら暗い寒空の中、撤収作業を一緒にする。テキパキと鮮やかに片付ける姿に、まだまだ追いつけないと改めて思う。歳月人を待たず。身の引き締まる文化の日となった。(シネマテークたかさき総支配人)

 第1、第3、第5日曜日に掲載します。

 

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