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【群馬】

上州の絹文化 伝える旅行記 前橋出身の徳永さん、原本を市へ寄贈

寄贈されたイタリアの本の表紙(左)。挿絵がある見開きは複製=前橋市で

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 明治初期に上州を視察したイタリア人が出版した旅行記の原本が六日、入手した前橋市出身の会社経営徳永詢(まこと)さん(70)から市へ寄贈された。徳永さんと市によると、上州が海外で紹介されたのはこの本が初めて。本には銅版画の挿絵もあり、製糸や養蚕が盛んだった当時の様子を伝えている。 (菅原洋)

 この本は、当時は横浜にあった駐日イタリア公使館のピエトロ・サヴィオ書記官が一八六九(明治二)年、同国公使らと約七人で上州を訪問した際の様子を記した「養蚕地帯調査旅行記」。一行は六月ごろ、前橋で二泊、伊香保で三泊、高崎で一泊したという。

 当時、前橋藩主は不在だったが、本には「大名の意向により、武士八十人がやって来て、駒形(前橋)のすぐ手前で我々(われわれ)を出迎えてくれた」とある。「前橋は上州国の養蚕の一大中心地」「生糸生産の完璧さは実に驚嘆以外の何物でもない」などとつづっている。

 挿絵では、女性たちが製糸や養蚕をする姿や、田植えなど農作業の様子を銅版画家に描かせている。

 当時の欧州では、カイコの病気が流行して生産量が落ちたため日本へ蚕種を求めたことから、蚕種の輸出額で一時はイタリアなどが占める割合は高かった。このため、同国は日本の原産地を視察し、生産の環境や量、品質、価格などを調査する必要が生じたとみられる。

 本は七〇年、ミラノで出版され、B5判に近いサイズの百七ページ。同国に二十年以上在住する徳永さんが、現地の古書店を回って長年探してきたが見つからず、この夏に知人を通じて購入した。原本はこの本を含めて日本国内に三冊しかないという。

 市の国際交流名誉アドバイザーとぐんま観光特使を務める徳永さんは「イタリア人が当時は命を懸けて日本へ渡り、記したこの宝物を市民に知ってほしいと寄贈した。絹の文化が明治維新を支えたことを伝えたい」と寄贈の理由を語った。

 本紙群馬版に「群馬学講座」を連載する市の手島仁参事兼前橋学センター長は「本は前橋の人々の人柄が良いことに触れ、地元の神社などに案内されたことも記している。上州などを初めて世界に紹介した貴重な本だ」と解説した。市はこの本を市立図書館で十二日から展示する予定。

 

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