東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 群馬 > 記事一覧 > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【群馬】

<おでかけパレット>草津「湯の花」 湯畑の木樋に白色の恵み

湯畑で湯の花を採集する直井さん=草津町で

写真

 百メートルほど離れた駐車場で車を降りた時点で、もう硫黄のにおいが鼻を突く。両脇に旅館やホテルが立ち並ぶ坂や階段を下っていくと、湯が流れる七本の木の樋(とい)からもうもうと立ち上る白い湯煙が見えてくる。群馬を、いや日本を代表する名湯、草津温泉(草津町)のシンボル、湯畑だ。

 近くにある源泉からは約五二度の湯が毎分四千四十リットルも湧き出している。湯は樋を通るうちに温度が下がり、周囲の浴場に供給される。五寸くぎを浸しておけば十日ほどで溶けてなくなってしまうほどの強酸性のため、大正時代から金属を使わない特殊な組み方をした木の樋が使われているという。

 湯温を下げるほかに、湯畑にはもう一つ大事な役割がある。樋をのぞき込むと、緑がかった湯の底に白いものが沈んでいるのが見える。湯に含まれる硫黄などの成分が日光や空気に触れて沈殿した「湯の花」だ。乾燥させて粉末にしたものが家庭で湯に入れ温泉気分が味わえる土産物として人気が高い。湯畑の樋は微妙な傾斜がつけられており、湯の花がたまりやすい工夫がされている。

湯畑の樋の湯の花

写真

 湯の花の採集作業を一手に引き受けているのが、町内で土建業を営む直井政一さん(67)。曽祖父の代から町の委託を受けており、直井さんも約四十年前から父親を手伝い、後を継いだ。

 採集は二カ月に一度。湯の花で湯をくみ上げるポンプがつまってしまうため欠かすことはできない。

 たまった湯の花はまるで濃い豆乳か、どろりと溶けきっていない白い絵の具のよう。ちりとりですくってバケツに入れ、布を張ったプラスチックのかごに流して余分な水分を切る。

 たちこめる湯煙の中で手袋や雨がっぱまで真っ白にしながら、一日かけて繰り返す。大変な作業だが直井さんは「こういう仕事だからさ」と平然としている。

草津温泉の湯畑=本社ヘリ「あさづる」から

写真

 湯畑の周辺は、常に記念写真を撮ろうとする観光客でいっぱいだ。直井さんは草津を訪れる人々を湯畑の中から眺めてきた。昔は旅館の名前が入った浴衣姿の高齢者が多かったが、ここ十年ほどで若者がぐっと増えた。大型バスの団体客は日本人より中国人観光客が目立つようになった。

 かつての湯治場というより、観光地の雰囲気が強くなったが、直井さんは「いいことじゃねえかな。若い人も来るってことは。草津も大したもんだ」と変化を歓迎する。

 ただ、最近では別の悩みも。「湯の花採ってる時、ギャラリーがすごい。『おじさん何してんのー』なんて声掛けてきたりする人もいてね。あんまり人がいすぎてもやりづれえ。芸能人じゃねえからさ」と照れ笑いした。 (原田晋也)

<湯畑・湯の花> 「これぞ温泉」といった風情があり、どこを切り取っても写真に映える。日中に樋を撮影すると湯が緑色に見えて美しい。夜はライトアップもある。湯の花採集は偶数月の平日に行われるが、日時は不定。観光客の採集体験イベントもある。

 湯の花は草津バスターミナル3階の草津町温泉図書館などで購入できる。家庭用の浴槽に入れると金属部分が傷むため注意が必要。95グラムで1400円程度。1回の採集で700〜1500個ほどしかできず、常に品薄状態という。湯畑観光の問い合わせは草津温泉観光協会=電0279(88)0800=へ。

写真

 ふるさとの色って何色でしょう。風景、果物、歴史を感じさせる建物のあの色、この色…。一人一人に思い入れがありそうです。群馬、栃木、茨城の三県で、その地の魅力を象徴する色を探しました。そこにはその色を守り、色と生きる人がいました。魅力的な写真が撮れる「インスタ映え」がして思わず撮りたくなる、そしていつまでもそこにあってほしい六つの色をお伝えします。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】