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【群馬】

<おでかけパレット>桐生「のこぎり屋根工場」 織都支えたれんが色、唯一現存

れんがの壁とのこぎり屋根が特徴的な「ベーカリーカフェ レンガ」=桐生市で、本社ヘリ「あさづる」から

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 のこぎりの刃を空に向けたような形の屋根と、赤れんがの壁。中に入るとおいしそうな香りが漂い、高い天窓から差すやわらかな光の下に多彩なパンが並ぶ。

 群馬県桐生市東久方町にある「ベーカリーカフェ レンガ」は、一九一九(大正八)年建造ののこぎり屋根工場を改装した珍しいパン屋。

 のこぎり屋根は繊維産地に多い工場の形態。天井に北向きに取り付けられた窓からは季節や時間帯に左右されずに一定の光が差し込む。織物の出来栄えのチェックに最適な採光ができる合理的な造りだ。

 「織都(しょくと)」の異名を持つ桐生市には二百軒以上が残るが、れんが造りで現存するのは市内でここだけ。もともとはレース製造会社の工場や事務所として使われていた建物で、廃業に伴い取り壊される寸前のところをレンガを経営する会社が買い取り、二〇〇八年に現在の形に生まれ変わった。

 壁の赤れんがは上品でレトロな雰囲気を醸し出す味わいが魅力。改装にあたり、内側からもれんが壁を眺められるようにした。高い天井を見上げれば、かつて使われていた、だるまストーブの煙突跡も見える。今も織機の音が響いてきそうだ。

 「自分は壊しちゃったから、罪滅ぼしに残そうって気持ちがあったんでしょう」。レンガを経営する武田俊雄さん(73)は、建物の取り壊しを惜しむ市の幹部からパン屋の出店を持ち掛けられ、引き受けた当時のことをこう振り返る。

 武田さんは別の織物会社の三代目。近くに同じ広さののこぎり屋根工場を持っていたが、織物産業全体が衰退する流れには勝てず、取り壊してしまったことが心残りだったという。

人気商品「のこぎり屋根のフレンチトースト」を持つ武田さん

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 武田さんが全く異業種のパン屋を始めたのは約四十年前。経営する織物会社が赤字続きだったころ、東京で知人が開いたパン屋が繁盛しているのを見て衝撃を受けた。

 いったん会社を休止し、妻子を桐生に残したまま、一年間無給を条件に頼み込んでこのパン屋で修業した。桐生に技術を持ち帰り、会社の登記に「飲食業」と「製パン業」を加えてパン屋を開業した。

 近年、桐生の産業観光が脚光を浴び観光客は増えた。街並みを巡るバスツアーのコースに店が組み込まれることも多く、一挙に数十人の客でにぎわうことも珍しくない。今では桐生を代表する店の一つに。「のこぎり屋根のフレンチトースト」が人気だという。

 織物産業の衰退という危機から、なんとか活路を見いだそうと努力してきた武田さんの人生はそのまま、桐生の街の歩みと重なる。「桐生のストーリーそのものというか、見本みたいだね」。武田さんはそう言ってはにかんだ。 (原田晋也)

<のこぎり屋根工場> ベーカリーカフェ レンガでは青空と赤れんがを対比させるとぐっと目を引く写真が撮影できる。

 市内には多くののこぎり屋根工場が点在し工場巡りをしながら写真撮影が楽しめる。今も織物工場として使われているものや、ワイン貯蔵庫や美容院などに生まれ変わった建物などさまざま。内部を見学させてくれるところもある。木造や大谷石造りなど材質によって違う多彩な表情を楽しみたい。

 市はホームページで市内の主要なのこぎり屋根工場をまとめている。「桐生市 のこぎり屋根」で検索を。レンガは=電0277(32)5553=へ。

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