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【群馬】

<志尾睦子のそふとフォーカス> (11)多勢に無勢 大いなる魅力

高松空港に降り立ち、最初に目に飛び込むお出迎えのフラッグ

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 二月の上旬、香川県を初めて訪れた。さぬき映画祭の最終日、「ふるさと映画祭シンポジウム」のパネリストにお声掛けいただいたのだ。さぬき映画祭は行政主導のもと二〇〇六年に始まった映画祭で、一三年からは同県出身の映画監督・本広克行氏がディレクターを務めている。

 本広さんといえば、あの「踊る大捜査線」を手がけた超有名監督であり、メジャー界のヒットメーカーだ。本広監督がディレクターに就任してから映画祭の企画内容も大きく変わり、集客数も飛躍的に伸びたといううわさは聞いていた。高崎はいわゆるマイナー映画祭だから、メジャーには少しばかりの気負いがある。敵陣に忍び込むような気持ちであったことは正直に申し上げたい。

 朝一の飛行機に乗り一路香川へ。飛行機を降りると、空港内にさぬき映画祭のフラッグがあり感激する。さすがメジャーはやること違う、と思っていたら、上映会場は外にほとんどサインがない。初参加の私は着いた途端に迷子になる。親切じゃないよね、と心の中でダメ出ししてみるが、見ていると、時間になると幾つかに分かれた会場へ、面白いように人々が吸い込まれていく。多勢に無勢か。仕方ない。流れに身を任せてみる。

 そうこうしている間にシンポジウムの時間になる。映画祭、映画館、映画監督を交えた九人で、コの字形にしつらえられたテーブルに着座する。通常は台本や、落とし所の共通認識などが知らされるものだが一切ない。事務局の方いわく「本広さんはおおらかな方なのでそういうのないんです」とのこと。

 おおらかだから打ち合わせがないって、面白いことを言う。自分のスタイルとはまるで違う環境に、これまた身を任せて臨む。直前に現れた本広監督にごあいさつもままならないまま始まってしまった。結果、トークは大変に盛り上がり、誰もが、それぞれの話に大げさとも言えるリアクションで驚いたり感心したりしてあっという間に三時間が過ぎ去ってしまった。

「朝まで生テレビ」方式でシンポジウムを盛り上げることも大事だと実感

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 他のイベントに参加のため中座した本広さんと、改めて話ができたのは夜の懇親会だった。シンポジウムの充実度をたたえると、本広さんは「朝まで生テレビ方式、よかったでしょう!」とニヤリ。そうか、確かに人に見せるシンポジウムではやらないスタイルだなあと思っていたのだ。そこでまた感心する。万事が万事こんな調子だった。こんなことありえない、こんなこと普通しない、と最初こそ戸惑うのだけれど、いつの間にか私はその雰囲気にのまれ、実に楽しい一日を過ごしていた。

 兎(と)にも角にも、私のセオリーとは全く違う映画祭の魅力に、見事にやられて帰ってきてしまったというわけである。 (シネマテークたかさき総支配人)

 第1、第3、第5日曜日に掲載します。

 

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