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【群馬】

伝えたい浪江への思い 県内に避難・長竹さん、片岡さん

絵本を手にする長竹さん(右)と片岡さん=高崎市で

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 東京電力福島第一原発事故で、避難指示が出された福島県浪江町から伊勢崎市に避難している長竹幸子さん(70)らが「被災者の思いを伝えたい」と一冊の絵本の読み聞かせや紹介に取り組んでいる。友人で、同町から静岡県富士市に移り住んだ学習塾経営堀川文夫さん(63)、貴子さん(64)夫妻が昨年に自費出版した「手紙 お母さんへ」。事故後に亡くした愛犬を主人公に故郷への思いをつづり、絵は教え子らが協力した。堀川さん夫妻や長竹さんは「原発事故を考えてもらうきっかけになれば」と話す。 (石井宏昌)

 絵本の語り手は雌のゴールデンレトリバー「桃」。浪江町で堀川さん夫妻や夫妻の飼う猫と楽しく暮らしていたが、原発事故で家族と一緒に故郷を離れ、避難生活に。絵本では大好きだった浪江町や、事故後に心身とも疲弊していく夫妻と桃の様子を描いている。二〇一二年六月に十一歳で死んだ桃。本の最後には桃から貴子さんへの「手紙」、夫妻から桃へのメッセージを記した。

 物語は貴子さんが考えた。浪江町の自宅解体を前に一六年十一月、退去作業に立ち会った体験がきっかけ。文夫さんが高校時代に初めてもらったラブレターや子どものころから愛用していたハーモニカなど思い出の品、浪江で暮らした証しがフレコンバッグ(除染袋)に廃棄された。涙を流して見守る文夫さんの姿に、貴子さんは「書き留めて置かなくては。忘れてはならない」と考えた。「事故への憤りや主張ばかりでは独り善がりになってしまう」と文章だけではなく絵本にした。二十八枚の絵は夫妻と二人の息子、孫のほか、浪江町で経営していた塾の教え子やその子ども、富士市の教え子も協力し、昨年十月に出版した。

 絵本は全国に避難する浪江町民を中心に広がり、長竹さんも出版を知ると、すぐに堀川さんに連絡して購入。伊勢崎市内の図書館など五施設に相談し、絵本を置いてもらうことになった。市内の市民グループも読み聞かせに活用する予定だ。

 堀川さんの塾仲間で浪江町から高崎市に避難している片岡美恵子さん(53)も高崎市内の聴覚障害者のサークルで八日に、手話通訳を通じて絵本の読み聞かせをする。福島県から避難している人たちの交流会などでも紹介している。

 長竹さんと片岡さんは「原発事故で避難した人はみんな同じ思いをしている。帰還した住民もいるが、かつての浪江の姿はもう戻らない。原発事故のことを語り継いで行きたい」と話す。堀川貴子さんは「故郷を失うことの重さ、切なさを伝えたい。私たちのような避難者を二度とつくらないで」と訴えている。

 絵本は千円(税込み、送料別)。問い合わせは堀川文夫さん=電090(2847)9305=へ。

 

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