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【群馬】

学ぶ意欲、老いて盛ん 人生経験積み集う「金山中学校」

熱心に学ぶ生徒たち=太田市で

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 「学びたい」という思いの強さは子どもに負けないよ−。学び直しをしたい高齢者らを対象に太田市が二〇一六年度に開校した「おおた金山(きんざん)中学校」(単年度)の二期目が三月に修了。好評を受けて本年度の実施も決まった。初年度から社会科を教える高田一(まこと)さん(63)は生徒の熱意に心打たれたと明かした。 (粕川康弘)

 教職を定年退職したばかりだった高田さんは講師就任の依頼に軽い気持ちで引き受けた。だが、授業が始まるとそれは甘かったと気づく。ほとんどが自分より年上の生徒たちの「学びたいという無言の熱量、圧力に圧倒された」という。

 「戦後の混乱期は勉強どころじゃなかった」と目を輝かす八十代の男性、何色ものペンでチェックして何度も読み返したことが分かる教科書を手にする七十代の女性、脳梗塞を克服して通学を続ける六十代の男性…。さまざまな人生経験を経て集っている生徒のまなざしに「まやかしは通じない。がっぷり四つで向き合おう」と腹をくくった。

 生徒の熱意に応えようと工夫した。板書を減らしポイントを分かりやすくまとめたプリントを作成。それをプロジェクターで拡大して見やすくする配慮も忘れない。

 授業は中学生の教科書に沿うが、新聞に遺跡発掘の記事があった時などには関連する情報を集めて解説することもある。国宝の挂甲(けいこう)武人埴輪(はにわ)について教科書には群馬県で出土したとの記述のみ。高田さんが「これは太田市内で出土した」と補足したが、「聞いたことがない」「違うのでは」などと収拾がつかなくなった。翌週、正確な資料を示すと生徒たちはやっと納得。後日、「有志で出土した神社に行ってきました」との報告に驚かされた。高田さんは「生徒は本当に探究心が旺盛。高校受験のある中学生相手では難しいが、金山中では横道にそれたようで実は深く学べる」と指摘。ただ「どんな質問が飛び出すか分からないので私も授業の予習や下調べが大変なんです」とこぼした。

授業をする高田さん

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 だからこそだろう。「中学卒業から六十年、当時とは違った解釈で日本史や世界史を学べた」「歴史が嫌いだったが少し扉が開いた気がする」「ニュースやクイズ番組がだいぶ理解できるようになった」とは修了生の率直な声だ。

 昨年十月には修学旅行として日帰りで栃木県の日光東照宮などを見学。「(改修前の)昔はこんなに人が多くなかった」などと盛り上がり楽しい学習体験となった。

 期末テストはあるが、受験勉強ではないこともあり成績表はない。それでも生徒の「学びたい」という思いは途切れず授業のたびに質問が高度になる。「学ぼうという意欲に年齢は関係ないですね」。高田さんの実感だ。

<おおた金山中学校> 市の施設を教室に月曜から水曜の午前中に中学生の教科書を使って国語と社会を学ぶ。いずれも元教員の高柳薫さん(63)が国語、高田さんが社会を担当。期末テストやホームルーム、日直当番もある。費用は月額2000円(別途教科書代)。6月に始まり、翌年3月まで。秋には修学旅行がある。初年度の2016年度は51人、17年度は70人が卒業した。昨年度の生徒の平均年齢は約70歳。本年度の募集要項は20日発行の「広報おおた」に掲載する。

 

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