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【群馬】

<志尾睦子のそふとフォーカス> (21)旅先の景色と映画と

宿泊先の窓から笠戸湾を望む。穏やかな海と空に心も解放される

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 山口県での周南絆(しゅうなんきずな)映画祭に参加するため宿泊先に選んだ国民宿舎は、笠戸島にある。下松(くだまつ)市の笠戸湾にかかる笠戸大橋を渡って島に入る。深紅のトラス橋が海と空の間に浮かび上がって存在感を放つが、とはいえ景色にとてもなじんでいて美しかった。

 宿に入り、部屋から海を見下ろすと入り江も近くの島も、ブロッコリーのようにこんもりと緑で覆われている。草木の密集度が高いのかなんなのか、緑の装いも私の住んでいる群馬の緑の豊かさとはまた違って見えてくる。オーシャンビューと夕日を堪能しながらの食事も格別で、身も心も癒やされていく。

 海なし県で生まれ育ったから、海にはなじみがない。海に行ったことがないわけではないが、人生のうちに数えるほどしかないのは事実だ。考えてみれば夜の海を眺めることもない。

 と思ってベランダに出て夜風に当たる。海を見るといっても月明かりでうっすら海面が見えるか見えないか。時折向こうの方でぼうっと明かりがついたり消えたりするだけ。そこでまた気がつくのがにおいと音。実は少し苦手な磯のにおいというのがしない。そして、これまた少し苦手な、ベタつく潮風がない。

 加えて、私にしてみたら、海をイメージして最初に浮かぶのが、東映のオープニングロールの荒磯に波だったりするから、日中から感じていた「何か違うな」は、あのザッパーンと程遠い、なぎの海の装いだったのだと気がつく。

 ちなみに、東映の荒磯は銚子の海らしい。太平洋だ。小学校の臨海学校は新潟の海だったから、海の原点はそこにある。日本海と太平洋の違いを感じてもいたはずだけれど、瀬戸内海ってこんなに違うんだとまた今更ながらの感激をした。

 翌日、宿を紹介してくれた友人にあれやこれやと、高崎人から見た周防の印象を話す。潮の満ち引きの話を聞きながら、そういえばそれを利用したサスペンスがあったとか、ラブロマンスもあった、と盛り上がる。

 映画を見ていればいろんな知識がつくはずだが、実際にこうして経験した時にそれを思い出さないと結びつかないのだから、私もまだまだ修行が足りない。というのが今回のオチである。 (シネマテークたかさき総支配人)

 

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