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【群馬】

<志尾睦子のそふとフォーカス> (22)愛すべき同志に思い馳せ

映画祭の会場は現在閉館中の映画館。建物は確かに古いが雰囲気のあるとても居心地の良い空間だ

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 西日本を襲った記録的豪雨の被災状況が連日報道されている。とても胸の痛む思いだ。殊更に、六月に行ったばかりの山口県周南市での被災は、あの美しい景色と温かな人たちの顔が鮮明なだけにざわつく心を抑えられないでいる。

 今すぐその場に行けないから、せめては、きちんと今何が起きていて、どうなっているのかを知る事が大人としての責務に思える。そしてそこからできることを見つけて、小さくても積み重ねていきたいと思う今日この頃だ。

 だからこそ今回は、六月に足を運んだ周南絆(しゅうなんきずな)映画祭を力強く紹介したい。個人的には映画も好きだけれど映画祭も好きだ。どんな人たちが、どんな方法で、何を感じてやっているのか、興味は尽きないものだ。人のふり見てわがふり直せる事が多々あるし、運営方法やプログラム立案においても、ホームページを見ているだけではわからない事が現地には必ずある。

 今年で九回目となる映画祭へ私は初めて参加した。周南絆映画祭は山口県出身の松田優作さんを顕彰する事が一つの柱となっている。毎年、松田優作出演作を上映し、近年では脚本のコンペティション「松田優作賞」を実施している。稀有(けう)な「表現者」である松田優作の魂を継承する映画作品を山口県から生み出したい、というのが賞設立の趣旨というから痺(しび)れる。

 ちなみに、第一回松田優作賞に輝いたのが足立紳さんの「百円の恋」で、二〇一四年に武正晴監督によって映画化され、一六年の日本アカデミー賞では、最優秀脚本賞と最優秀主演女優賞(安藤サクラさん)、優秀作品賞、優秀監督賞、優秀助演男優賞(新井浩文さん)に輝いた。

 語弊を恐れずにいうならば、資金繰りも厳しい地方の小さな映画祭であることは間違いなかった。しかしビジョンと熱量はとてつもなく大きい。松田優作賞が日本映画界に投じた一石の波紋は大きかった。これが何よりの証拠だ。そうした活動をする人たちが運営する映画祭はとても小さく、とても素朴で温かみのあるすてきな映画祭だった。

 一観客の私はまたここに戻ってきたいと素直に思った。これこそが、映画祭の魅力に違いない。負けじと頑張らねばと思って帰路に就いた。

 映画祭の同志に思いを馳(は)せて、次の一歩を踏み出す夏となった。

 (シネマテークたかさき総支配人)

 

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