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【群馬】

県防災ヘリ墜落から1週間 「2人操縦体制」検討へ

県庁に設けられた献花台と記帳台には多くの県民が追悼に訪れている=前橋市で

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 県の防災ヘリコプター「はるな」が墜落し、搭乗者九人全員が死亡した事故は十七日で発生から一週間になる。国の運輸安全委員会と県警が原因究明を急ぐ一方、県は、操縦者が二人搭乗する「二人操縦体制」の導入を検討するなど安全対策の見直しを迫られている。 (石井宏昌)

 総務省消防庁によると、消防防災ヘリの墜落は、二〇〇九年に岐阜県高山市で三人が死亡、翌一〇年に埼玉県秩父市で五人が死亡する事故が発生。昨年三月には長野県松本市で、はるなと同機種の同県防災ヘリが墜落し、搭乗員九人が死亡した。この事故を受け、国は有識者による検討会でヘリの安全性向上を協議し、今年三月に報告書をまとめた。

 報告書では機長に加え、もう一人操縦者が搭乗する二人操縦体制が提言された。機長が操縦に専念し、もう一人が周囲の安全を確認して機長の負担を軽減するほか、気象変化などを複数の目で確認して安全向上につなげる狙いだ。

 操縦者が機体の姿勢や位置、飛行している状態などを客観的に把握できなくなる「空間識失調」に陥る事態や体調不良などに対応もできる。

 長野県は事故後、専門家らによる検討会で総合的な安全対策をまとめ、二人体制を導入。今年三月から訓練を始め、五月に運航を再開した。同県消防課の担当者は「機器をチェックする目が増え、周囲の環境変化の監視も分担できて安心安全につながる。パイロットの精神的な負担も軽くなるという」と効果を指摘する。

 しかし、高度な技術を持つヘリ操縦士は全国的に不足しており、消防庁が昨年実施した調査では、防災ヘリを運航する五十四団体のうち、二人体制は四割ほどにとどまる。

 県は導入について、これまで検討会などを立ち上げて協議した経緯はないという。事故を受け、県消防保安課の担当者は「予算や人材面などもあるが、今後、他県の事例を参考にしながら検討していく」と導入に向けて調査する考えを示した。

◆救助や救急出動へ影響懸念 消防隊員に動揺も

 県の防災ヘリの墜落事故で犠牲になった九人のうち、七人は広域消防本部から派遣された隊員だった。救助分野の優秀な人材を失ったことに消防関係者に動揺も広がっている。

 県消防保安課によると山岳遭難などの救助や傷病者の救急搬送などの防災ヘリの緊急運航は二〇一七年度、百九十件あった。機体の点検があったため例年より少なく、ここ数年は二百件を超える。県内は多くの登山客が訪れるため、救助の出動のうち山岳活動が八〜九割を占める。

 県は今後、緊急運航の要請があった場合、相互応援協定を結ぶ近隣の栃木、茨城、埼玉、長野など近隣七県に防災ヘリ出動を要請する。県警ヘリとも連携を密にする。同課の担当者は「他県との連携で活動に影響のないようにしたい。(現地到着までの)タイムラグは生じてしまうが、大きく影響はしない」と強調する。県内のドクターヘリの代わりに行っていた運用は難しくなるという。

 県は二〇年度に新型機購入を予定するが、ヘリ空白期間を短縮するため、大沢正明知事は導入を前倒しする考えを示し、リースを含めて検討する。

 県内の広域消防関係者の精神的なショックも大きい。県西部の広域消防本部に所属する三十代の隊員は「消防学校などで一緒に仕事をした人が犠牲になった。同世代で、家族も知っているので…」と声を詰まらせた。県防災航空隊を希望し、近く入隊の見通しもあったというが「希望を知っていた妻は事故を聞いて震えが止まらなかった。私も(安全性に)疑問を感じる」と漏らす。別の広域消防本部の職員は「事故を受け、消防職員のストレスチェックも検討していきたい」と話した。 (石井宏昌)

◆外傷性ショックが搭乗員全員の死因 県警発表

 県の防災ヘリコプターが墜落し九人が死亡した事故で、県警は十五日、機長で操縦士の天海紀幸さん(57)=前橋市、整備士沢口進さん(60)=伊勢崎市=の死因が全身を打ったことによる外傷性ショックと発表した。これにより、搭乗者全員の死因が外傷性ショックと判明した。

 天海さんと沢口さんは、県がヘリの運航や整備を委託している東邦航空社員で、県防災航空隊員として勤務していた。

 県警は今後、業務上過失致死容疑を視野に事故原因を捜査する。

多くの関係者が訪れた田村研さんの告別式=中之条町で

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◆蜂須賀さん、田村さん告別式 悲しみ新たに 東吾妻中之条

 県の防災ヘリコプター「はるな」に搭乗して亡くなった消防隊員らの告別式が十六日、県内の斎場でしめやかに営まれ、親族らが悲しみにくれた。

 東吾妻町では吾妻広域消防本部の蜂須賀雅也さん(43)の告別式が行われた。同町の元消防団長の男性(47)は「いつも笑顔だが、仕事は真剣で頼れる人だった」と振り返った。蜂須賀さんの娘さんと自身の息子が同級生で「応援というか何か力になれたら」と話した。

 中之条町の斎場で行われた同本部の田村研さん(47)の告別式では、多くの参列者が会場内に入ることができず、屋外に設置されたスピーカーに聞き入った。

 喪主で妻の留美さんは「お会いした多くの方から立派な仕事をしてきたことを聞き、すごい人なんだと思いました。残された子どもたちとお父さんのことを胸の中にしまって生きていきます」と気丈に話した。

 田村さんの長男も「言葉で伝えられなかったことがたくさんあるけれど、立派なお父さんを持てて僕は本当に幸せでした」と泣きながらあいさつした。参列した高山村の農業荒木毅さん(71)は「事故で有能な人が亡くなったことはとても残念で大きな損失だ」と悔やんだ。 (市川勘太郎)

 

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