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【茨城】

<取材ノート いばらき2016>太陽光発電所 乱開発に歯止めを

筑波山中腹に設置された太陽光発電所=つくば市で

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 東京電力福島第一原発事故以降、再生可能(自然)エネルギーの雄として注目されてきた太陽光発電。全国第一位の設備導入容量を誇る県では今年、事業用発電所を計画する業者と、自然や生活環境への影響を懸念する地域住民とのトラブルが顕在化。立地や地元合意など、業者が配慮すべき条件を定めた条例やガイドライン(指針)を定める自治体が相次いだ。周辺環境と調和の取れた開発が求められている。

 「大雨が降ると、発電所の敷地から水や泥が近くの沢に流れ込む。下にある集落の家で、飼っていたコイが全滅したこともある」。つくば市沼田の筑波山中腹で今年三月に稼働した大規模太陽光発電所(メガソーラー)。計画反対の住民運動を展開した区長の渡辺一雄さん(67)は、稼働後も発電所に足を運び、その様子を動画に収めている。

 筑波山では昨年から、中腹の計四カ所に、民間業者が太陽光発電所の建設を計画。土砂災害や景観の悪化を心配した渡辺さんらは今年一月、つくば市長らと共に県庁を訪ね、橋本昌知事に建設阻止を求める要望書を提出した。

 水郷筑波国定公園内に位置する二カ所は、県が自然公園法に基づいて不許可とし、一カ所は業者が申請を取り下げたが、区域外の一カ所は、計画通りに建設された。「災害が起きたら誰が責任を取るのか。山の斜面や民家の近くに造ってほしくない」と渡辺さんは訴える。

 共に活動したNPO法人「つくば環境フォーラム」代表理事の田中ひとみさんも「再生可能エネルギーを生む太陽光発電は推進すべきだ。でも、二酸化炭素の吸収源である森林を伐採してまで設置するのはかえってマイナス」と強調する。

 反対運動を受け、市は六月、筑波山と、隣接する宝篋(ほうきょう)山のほぼ全域を設置禁止区域とする条例を施行、職員が定期的にパトロールするようになった。

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 「環境の保全や防災も重要だが、住民との合意形成もポイント」。日立市環境政策課には今年一月、住宅地に隣り合う森林に計画された太陽光発電所について、住民から相談が寄せられた。パネルから発生する熱、反射光、景観の悪化などを不安視する声だった。

 発電所の面積は一ヘクタール未満で、設置に必要な手続きは市農林水産課への樹木伐採の届け出のみ。太陽光パネルは、建築基準法上の工作物からも除外されている。「業者がチラシを近隣に配布したのは、着工の前日。何が造られるのか、市も把握できていなかった」と担当者は振り返る。

 市と自治会の求めに応じ、業者は住民向けの説明会を実施。太陽光パネルを住宅から離すなどの対策を取った。四月の稼働後は、住民から苦情は寄せられていないという。

 日立市は八月、「太陽光発電施設の適正導入」と題したガイドラインを施行。業者に対し、市との事前協議や、必要に応じて住民説明会の開催などを定めた。

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 県が十月に施行した「太陽光発電施設の適正な設置・管理に関するガイドライン」は、「立地に適当でないエリア」として、通常は要件が合えば開発が許可される「河川区域」「土砂災害警戒区域」に加え、法令上の制限がなくても「景観に優れた地区」「治水への影響が懸念される河川沿い」などを挙げている。

 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まって五年目。県環境政策課は「太陽光発電所は、地域との共生の形を確立する時期に来ている」と見通す。

 太陽光発電所は電気事業法に規定され、敷地に切り土をする場合や、民家との距離の取り方など、地域環境への配慮が弱いという。県は「立地や設計、事業終了後の設備廃棄などの面で、住民の安心・安全を確保するより具体的な基準を設けてほしい」と国に求めている。 (酒井健)

 

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