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【茨城】

<ひと物語>美しい和紙に恋して 紙布作家・妹尾直子さん(37)

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 和紙から紡いだ糸で布を織る「紙布(しふ)」に魅せられ、県内に移り住んで間もなく二年がたつ。陶芸家ら芸術家が集まる笠間市内に工房を構える。「和紙が何より好き。何時間でも触っていられます」。和紙に恋した。

 「紙の博物館」(東京都北区)によると、紙布は江戸期、木綿が貴重品だった山陰や東北地方で盛んに織られたが、近代以降は廃れた。

 作業は糸作りから始まる。常陸大宮市の和紙職人に特別にあつらえてもらった頑丈な和紙を、四つに折って、二ミリ幅に裁っていく。ぬれタオルで水を含ませてから、平らな石の上で転がすようにもむ。「もんでも切れない。和紙はすごいんです」。細くなった和紙をよって、糸車にかけると、ピンと張った糸が出来上がる。

 機織り機で着物などに織り上げるが、着物一着分の糸を作るのに一カ月もかかる。「何でも一から作りたいから苦ではない。素材から作れるなんて、すてきでしょ?」と笑う。

 京都市出身。大学で油彩画の表現方法を模索していた二十歳のころ、「小川和紙」で知られる埼玉県小川町で紙すきを見学し、和紙に出合った。「さまざまな工程を重ねて、仕上がるのは紙一枚。何て尊い仕事なんだろう」と心を打たれた。大学卒業後、全国各地の和紙の産地を訪ねた末、福井県越前市の手すき和紙会社に就職した。

 和紙の染色の手法を学ぶ中、織物にも興味を持ち、沖縄県に移住して首里織の工房で働いた。そこで地元の紙すきの職人から、将軍家に献上した門外不出の工芸品「白石(しろいし)紙布」を独学で復元した水戸市の桜井貞子さんの存在を聞いた。

 居ても立ってもいられなくなり、水戸に飛んだ。実際に目にした桜井さんの糸作りは繊細で、作品は力強かった。「とにかく美しい。紙が喜んでいるように感じた。どうしてこんなことが和紙でできるのか」。衝撃を受けた。これまで和紙と織物を追い続けてきて、「紙布こそ、自分のやりたいことだ」と行き着いた。桜井さんに師事するため二年後、茨城移住を決断した。

 現在、西ノ内和紙の工房でアルバイトをしながら師の元に通う。今月十八日、紙の博物館で始まった桜井さんの作品展に、初めて帯と着物の計四点を出品している。「紙布を受け継ぐために移住した。先生とたくさん話し、学び、その後ろ姿を見ていきたい」と目を輝かせる。 (山下葉月)

<せのお・なおこ> 1980年3月、京都市生まれ。京都造形芸術大卒。和紙の世界に飛び込み、福井県で紙すき、沖縄県で植物繊維などからの織りを学ぶ。笠間市在住。「紙布〜桜井貞子作品展〜」は紙の博物館で開催中。月曜休館。6月4日まで。問い合わせは同館=電03(3916)2320=へ。

 

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