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【茨城】

<明日を託す 知事選>(1)原発避難計画 支援届かない高齢者も

高齢女性の車椅子を押す「サービス付き高齢者向け住宅」の職員。原発事故時の避難に不安を抱える=県内で

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 知事選(二十七日投開票)には、七選を目指す現職の橋本昌さん(71)、元経済産業省職員で新人の大井川和彦さん(53)=自民、公明推薦、市民団体が擁立した新人の鶴田真子美(まこみ)さん(52)=共産推薦=の無所属三人が立候補し、舌戦を繰り広げている。わたしたちの負託を受けた新知事が、取り組むことになる課題を探った。

 演歌のメロディーが広間に流れ、マイクを握る人を取り囲み、車いすの高齢者数人が拍手を送っている。

 そんな姿を見ながら、県央地区のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を経営する男性(75)は、不安を口にする。「現実的な避難は難しい。人の命を預かる仕事に携わる人なら、誰もが思っているはず」

 この施設は、日本原子力発電東海第二原発(東海村)から、半径約三十キロ圏にあり、原発で大事故が起きれば、避難を迫られる。

 生活する六十〜百歳代までの約五十人をどう避難させればいいのか−。車いすの人、寝たきりの人、酸素吸入器をつけた人もいる。

 施設の想定では、職員が所有するバスに、高齢者を乗せて避難する。「寝たきりの人を運ぶには、最低でも二人は必要。実際、避難となった時、約五十人の職員全員が出勤できるか分からない。どこに避難するのかも、決まっていない」と課題を積み残す。

 さらに問題なのは、サ高住は要支援者が暮らすのに、行政の線引きでは、賃貸住宅扱いで「社会福祉施設」ではないため、避難支援の対象者から抜け落ちている現状がある。

 「社会福祉施設」では、県が避難計画づくりの支援を続け、特別養護老人ホームなどの高齢者施設百四十三施設のうち、約八割が策定を終えた。これらの計画だけで、うまく避難できるのかは分からないが、サ高住ではその計画さえ、十分に整っていない。

 県長寿福祉課によると、サ高住は百九十一施設あるが、原発三十キロ圏の施設数も正確に把握していない。担当者は「サ高住まで、手が回っていない。それだけではなく、高齢者が多く住む団地の避難はどうするのか。どこまで考えればいいのか」と吐露する。

 原発三十キロ圏内にある十四市町村で、自力で避難が困難な高齢者らは、報告が来ていない鉾田市と茨城町を除き約三万八千人。原発事故で、どう避難させるのかが定まっていない。

 那珂市で七月にあった住民説明会でも、心配する声が出た。参加した上宿第一自治会の後藤只男会長(70)は「要支援者を避難させる計画がないと聞いて、もどかしかった。自治会として、動けない人を見過ごすわけにはいかない」と話す。

 新知事は、避難の対象から外れる人が出ないよう「網の目」をふさぎ、きめ細かな計画をつくる必要がある。 (山下葉月)

 

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