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【茨城】

<ひと物語>アニメ好きで駅伝を コトブキヤ宣伝ランナー・稲田翔威さん(23)

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 大学時代に箱根駅伝を三度走った陸上エリートにして、アニメ大好きの「オタクランナー」。常陸太田で鍛えた脚力を生かし、プラモデルやフィギュアのメーカーとして知られる壽屋(コトブキヤ、東京都立川市)に入社し、同社初の宣伝ランナーを務める。

 意外にも、市立太田小学校に入りたてのころは、長距離走が苦手だった。秘めた力が目覚めたのは四年の時。校内のマラソン大会で足の速い友人を追走してみると、思いがけず良い走りができた。家族にほめられ、走る喜びを見いだした。

 市立太田中学校に入学後は、陸上部がなくサッカー部に所属したが、素質を見込んだ横倉寿美教諭の指導で実力を伸ばし、県大会へ出られるまでになった。このころ、友人の影響でアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」と出会い、オタクの道を突き進んでいった。

 高校は陸上競技の強豪、水城高(水戸市)へ。厳しい練習の支えになったのがアニメ鑑賞だった。けがの心配がない趣味で「ランナーに合っていた」と話す。練習疲れで夜に見られない場合は「録画を朝に一話鑑賞してから通学した」。

 あこがれの箱根駅伝に出るため、大学は順天堂大を選んだ。二年で初出場した際、長門俊介コーチ(現・監督)から「一人に抜かれるごとにアニメグッズ一個没収」とハッパを掛けられたことが大きな話題に。結果は二人に抜かれて区間十五位。長門コーチは冗談のつもりだったが、「けじめとして」マネジャーにグッズ二つを預けた。

 報道で事情を知ったコトブキヤからツイッターを通じて「補給」の提案があった。それは丁重に断り、翌年、四区で二人を抜き去り自力で宝物を取り返した。四年は七区で区間五位の好走を見せたが「区間賞を狙っていた」と悔しがる。

 陸上は大学で引退し、自衛隊に入るつもりだった。しかし長門コーチから「コトブキヤと縁ができたのだから、宣伝ランナーをやってみたら」と提案された。

 自衛隊かコトブキヤか。悩むこと三カ月。順大陸上部同期の松枝博輝さん(富士通)に「今しかできないことをやったら」と背中を押され、コトブキヤで陸上を続ける道を選んだ。心意気を受けて会社も陸上部を設立、実業団登録した。

 普段は秋葉原の店舗で通常業務をこなし、終業後に皇居で練習を積む。個人の目標は、マラソンで東京五輪出場。コトブキヤ陸上部としては、アニメ好きのメンバーをそろえてニューイヤー駅伝に出るのが夢だ。

 現状では、いずれの実現も容易ではない。心に誓っているのは「環境のせいにしない」。大学OBで「元祖山の神」の今井正人さん(トヨタ自動車九州)から贈られた言葉だ。険しい道のりだが、ホビー業界とスポーツ界をつなぐ存在として、はるかなゴールを目指しひた走っていく。 (越田普之)

<いなだ・しょうい> 1994年2月、常陸太田市生まれ。2016年に壽屋入社。以来、宣伝ランナーとして数々の大会に出場している。フルマラソンの自己ベストは、今年2月の東京マラソンでマークした2時間22分50秒。7月には大洗町で初開催されたひぬま夏海マラソンに出場、10キロの部で優勝を飾った。町を舞台にしたアニメ「ガールズ&パンツァー」の大ファンで、劇場版の視聴回数は30回に上る。千葉県船橋市在住。

 

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