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【茨城】

<ひと物語>伝統守り果敢に挑戦 「桐下駄」工房の3代目・猪ノ原武史さん

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 結城地方に、江戸時代から続く伝統工芸「桐下駄(きりげた)」を守り続ける。祖父の代から七十年の歴史を持つ「桐乃華工房」の三代目。「子どものころから、父親の後ろ姿を見ていたし、この世界へ入るのは、何の抵抗感もなかった。モノづくりにも関心があったし、自然な形で職人になった」

 伝統を引き継ぐだけでなく、現代の生活様式にも合わせた斬新なアイデアも次々と生み出している。

 トヨタ自動車と、高級車「LEXUS(レクサス)」の販売会社が、若い職人たちを支援するため、二〇一六年度に創設した「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT(ニュー タクミ プロジェクト)」の第一回の「匠(たくみ)」に、県代表として選出された。匠は全国各地の陶芸やガラス、染め物など、さまざまな分野に及ぶ。

 レクサスのプロジェクトが縁で全国の匠たちとの交流も始まり、大分県の「杉下駄」や千葉県の「萬祝染(まいわいぞめ)」とコラボした新しい製品の商品化にも取り組んだ。

 さらなる挑戦で、専門家のアドバイスを受けながら、一年がかりで完成させたのが、クロコダイルの革を表面に張り付けた「クロコGETA(ゲタ)」だ。

 「この一年は、本当に刺激ばかりで、貴重な出会いがあった。単に職人というだけでなく、作品に対する哲学なども考えた上での創作活動にもなりました」

 静岡県の駿河塗下駄、香川県の志度(しど)桐下駄と並び、日本三大下駄産地の一つの結城地方。しかし、隆盛を誇っていたのは一九五〇年代までで、着物離れとともに、下駄の需要は減少を続けた。

 そんな中、今までにない桐下駄として送り出したのが、新素材を加工した「デザインクロスシリーズ」。エイの革を張った粋で重厚な下駄を皮切りに、サメの革、ヤマブドウのつるも素材として活用した。

 「着物、浴衣だけの下駄ではなく、洋服に合うもの。そして、若い世代にも履いてもらうため、デザインも工夫しています」

 今、主力商品として取りくんでいるのが、サンダルのように気軽に履ける「下駄サンダル」。工房内には三百種類の下駄が並び、毎年、十作の新作も発表している。原木の桐の調達も周辺では入手が難しくなり、最近は、秋田県、新潟県などにも買い付けに出向くという。 (原田拓哉)

<いのはら・たけし> 1977年8月、筑西市生まれ。地元の県立高校から東京都内の大学に進学し卒業後、つくば市内などで会社員を経験し、2003年から家業を手伝う。自宅に隣接する「桐乃華工房」の3代目の下駄職人。県の魅力を観光客などに伝える「いばらき観光マイスター」の認定も受ける。県伝統工芸品販路開拓研究会会員。

 

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