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【茨城】

<ひと物語>水害から創造的復興 被災古民家を仏料理店にした酒造会社社長・野村一夫さん(63)

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 常総市本石下の老舗酒造会社「野村醸造」で、一昨年九月の水害で浸水した店舗兼住宅を改修。古民家を活用したフランス料理店「ブラスリー ジョゾ」を今月二十二日、オープンさせた。

 「水害から二年二カ月の間、いろいろな人に手助けしてもらい、復旧が復興に至ったかな。前の状態に戻すのではなく、ワンランクアップしたステージを目指したい」と語る。

 水害当時、蔵などは胸の高さまで浸水した。出荷前の日本酒は泥をかぶり、廃棄処分に。酒造りに欠かせない「こうじ室(むろ)」などに水が入り、損失額は約七千万円に上ったという。

 数日後から県内の酒造の従業員らが駆け付け、こうじ室やタンクの手入れをした。ボランティアら延べ約五百人が泥かきをして、倉庫を片付けた。

 新酒の仕込み時期は二カ月後に迫っていたが、年末の出荷にこぎ着けた。ラベルには「ご支援、ありがとうございました」と感謝の言葉を書き込んだ。

 「従業員みんなで泥かきをした。彼らの生活を守るためにも、事業縮小をしないことは最初から念頭にあった」という。「ライバルのはずの酒蔵や、大勢のボランティアに助けてもらった。使命感と恩返しの気持ちから、創造的な復興をしようと考えた」

 昨年二月から海外向けの新しい「紬(つむぎ)美人」の仕込みを始めた。今年六月、フランスで開催された日本酒品評会に出品。「フランス料理に合う日本酒」として、純米吟醸部門で最高賞のプラチナ賞を受賞した。

 さらに、浸水した築九十四年の店舗兼住宅を、フレンチレストランに改造することを思い立った。筑波大学の芸術系の准教授らの支援も得られた。店名の「ジョゾ」は、日本酒の「醸造」をもじった。

 二階の床を撤去して吹き抜けにして、住宅部分は厨房(ちゅうぼう)に変えた。柱や梁(はり)、建具は、できるだけ残した。照明には酒瓶を利用し、テーブルクロスなどはフランスから調達した。

 料理は、県産食材と旬にこだわっているという。提供する水は、日本酒の仕込み水。日本酒だけでなく、自家製のフルーツの酢やジャムなども販売する。スイーツの製造販売も始める予定だ。

 「イギリスのパブのように、気軽に立ち寄れる店にしたい。復興の象徴で、地域の人たちが集まれる場所になればいい」と願っている。 (宮本隆康)

<のむら・かずお> 1954年、横浜市生まれ。都内の百貨店に勤務後、妻の実家で1897年創業の「野村醸造」5代目になった。レストラン「ジョゾ」は、ランチ営業は午前11時半〜午後3時半、ディナーは午後5時半〜午後9時。原則、月曜定休。問い合わせは野村醸造=電0297(42)2056=へ。

 

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