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【茨城】

<ひと物語>「刺し子」の魅力を海外に 東海村在住の文芸作品翻訳家・アリスン・ワッツさん(54)

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 布に線を描くように刺繍(ししゅう)し、緻密な模様を浮かび上がらせる手芸「刺し子」に魅了され、二年前から作品づくりに取り組んでいる。

 巨大な鎖を描くように縫いつける伝統的な「吉原つなぎ」を施したデニムジャケットや、緑や黄色などさまざまな色糸を使ったイチョウ模様の布巾など作品はさまざま。「月に一度、一つの作品を仕上げるようにしている。一度始めたら止められない」とほほ笑む。

 刺し子に関する情報もインターネット上で発信している。サイト名は、自分の名前と疑問詞「what(何)」をもじった「WATTS(ワッツ) SASHIKO(サシコ)」。すべて英語で、作品のほか、本などで学んだ歴史や、自身が見つけた日常の中で使われる刺し子作品を写真つきで紹介する。

 外国人の手芸愛好家からもコメントが多数寄せられている。「日本にいるからこそ、刺し子の詳細な情報を伝えたい」

 三十年前、豪州から英語教師として来日した。当時の日本原子力研究所(東海村)の職員らに英会話を教えていたが、現在はフリーランスの翻訳家として活動している。

 手芸は元々苦手だったが、二十年ほど前から刺し子の存在は「とてもきれいなもの」として認識していた。転機は二〇一五年に体調を崩したこと。原因不明で、半年ほど休職して自宅養生を迫られた。この時、気になっていた刺し子を始めると、のめり込んだ。「心が癒やされた。手芸が苦手な自分でもできたことに、満足感が大きかった」と振り返る。

 この経験は、自分の人生を考えなおす契機になり、「大好きな刺し子の魅力を世界に広めたい」と思うようになり、村内で開かれている教室にも通うようになった。

 今月から自身のサイト上にショップを開設し、外国人向けの刺し子体験キットの販売を始めた。名古屋の手芸会社と交渉して、キットを卸してもらい、手軽な価格に設定した。

 「海外で刺し子が広まり、人気がでつつある」とニーズを実感するが、英語で書かれた書籍や説明書の少なさを感じている。より手に取りやすいよう、翻訳家としてのスキルを生かし、丁寧な英語の説明書を同封する。「刺し子は誰でもできるのに、簡単で美しい。刺し子を多くの外国の人に知ってほしい」と思いを込める。

 キットに関する問い合わせはアリスンさんのメール=alison@wattssashiko.com=へ。(山下葉月)

<アリスン・ワッツ> 1963年10月、豪州・南オーストラリア州出身。本業は翻訳家で、作家・ドリアン助川さんの小説「あん」など文芸作品の英訳を担当。芸術を通じて命の大切さを考えるイベントを企画しており、今年2月には、東日本大震災から6年を前に、ドリアンさんが、放射線の線量計を片手に松尾芭蕉の「奥の細道」を自転車でたどった旅の記録「新・奥の細道」の朗読コンサートを東海村で開いた。

 

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